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オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 17

押収された隕石とハイゼンベルクの数式

キヨは、Mの足取りから判明した隕石の在り処を伝えるべく、Mを尾行した日に掴んだ事実を細かなレポートに書き記した。そして、ライカから取り出したフィルムをレポートと一緒に封筒に入れ、CAPを通じてGHQ高官の元へとそれを届けた。

 

 

数日後、キヨの元に届いた司令は以下のものだった。

― Congratulations, you don’t have to take care of the tulips anymore(おめでとう、もうチューリップの世話はしなくてよろしい)

 

チューリップとは、キヨがマークしていたY氏とMのことを指す暗号である。キヨは、その電信を受け取った翌日には国分寺のアパートを引き払って麻布の実家へと戻る手続きを行った。3カ月に及んだキヨの諜報活動はこれですべて終わったのだった。

 

GHQ高官は自らの指揮によってMPを数名組織すると、通訳を加えた部隊で歯科大学の研究室に憲兵たちを派遣させた。隕石の隠滅を防ぐため、事前通告なしの抜き打ち捜査である。

 

 

米軍の憲兵隊による突然の捜索は、研究室の関係者を震えあがらせた。通訳による令状が読みあげられた上で、冷暗所に保管されていた隕石は、憲兵の一人が持参したジュラルミンケースに厳重に仕舞われて鍵がかけられた。研究書類とおぼしき資料も軒並み段ボールに詰められ、隕石に関係する物品はすべて憲兵隊によって押収された。

 

 

この一部始終を目の当たりにしていたTは、為すすべもなく呆然と憲兵たちを見つめていたが、自分の身の上に起こった特殊な能力についての証拠はどこにもない。押収された資料には、隕石の分析とそれに基づく化学記号は含まれていたが、隕石がもたらす不可解な現象についてはその推定値を求めようとする数値と謎の数式が残されているのみだった。

 

 

MPたちは、隕石とその資料一式を押収すると、英語で記された令状を研究員の一人に渡し、それらの証拠品を建物の外に停めてあるトラックへと運び始めた。

 

令状には、以下の内容が英文タイプで記されていた。

― 1.隕石は放射線を浴びた危険な物質である。

  2.現在の日本は連合軍の統治下にあり、その国土に落ちた隕石の所有権はいかなる理由があろうとも連合軍が有するものである。

  3.研究室における調査資料は、この物質を安全に処理するために必要であり提出を求める。

上記の理由により、隕石とその研究資料は今後GHQの管理下に置くものとする  ―

 

Y氏が掘り起こした隕石は、歯科技工士Mによって助教授Tの元へと渡り、こうしてGHQの厳重な管理下の元へと運ばれる数奇な運命をたどったのだった。

 

一欠片の金属片を除いては

 

第一章 終わり

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