Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨 アカサカベースでは、オリジナルの高品質なサウンドグッズ(スピーカー、アンプ等)、 トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないアイデアを活かしたメディアアートをはじめ、 大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。

オリジナル小説「秘密の八重歯」第二章 – 6

流れ星が運んでくれた“星の王子さま”

リチャードの星への願いが通じたのか、入籍から数カ月後にはキヨの妊娠が判明した。その知らせを受けて一番喜んだのはリチャードだった。もちろん、キヨも嬉しかったのだが、産休で大学を休まなくてはならなくなること、育児と勉学の両立、そして何よりも中央情報部が難色を示すのではないかという不安もあって素直に喜べないでいた。

 

中央情報部の担当者に妊娠のことを伝えると、彼は笑顔で「おめでとう、キヨ」と言って握手を求めてきた。米陸軍少佐であるリチャードを夫にもてば、別居生活を余儀なくされる。その寂しさを埋めるには、子供の存在が何よりも大切であることは情報部の担当者でも分かることだったからだ。

 

 

数日後、中央情報部の担当者から告げられたのは、12週間の産休と育休を認めるが、それ以降はそれまで通り復学するようにというものだった。国連によるInternational Labour Organization(国際労働機関)が定める基準と同じである。産前に6週間、産後6週間の休暇は保証されるが、それ以降は仕事に戻らなくてはならない。

 

当時は、アメリカといえども女性は家庭を守るのが良しとされていた時代である。キヨのような高い志をもって勉学や仕事に勤しむ女性は、広いアメリカをもってしてもごく少数だったのだ。リチャードは、当然のことのようにキヨには大学を中退してでも子育てに専念するべしという考えだったが、キヨはこれを頑なに拒んだ。

 

妊娠が分かってからのキヨは、それまで以上に勉学に励み、単位をすこしでも多く取れるように必死で努力した。その甲斐もあって、キヨは産休に入るころには2年後の6月の卒業が可能なレベルに達していたのだった。それにはリチャードの協力も大きかった。日本的な奥ゆかしさが災いしてディベート(討論)を苦手としていたキヨだが、リチャードはディベートが得意だったため、討論で流れを有利に運ぶコツを教えてもらうことができたのだ。

 

 

二人の子供が誕生したのは、婚約が決まった日から1年目となる1948年5月9日。3,200gの平均的な体重の男の子がミシガン州で元気な産声を上げたのだった。名前は“ノエル”と名付けられた。1946年のクリスマスシーズンから交際をはじめたキヨとリチャードにとって“ノエル”は特別な名前である。フランス語でクリスマスの意味をもつ言葉だからだ。

関連記事

Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨

Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨

アカサカベースでは、トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないユニークなアイデアを活かしたサウンドグッズをはじめ、大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。

屋号 Akasaka Base
住所 〒107-0052
東京都港区赤坂7-5-46
電話番号 03-3584-0813
営業時間 13:00〜18:00
定休日:土日祭日
代表者名 前嶋とおる
E-mail info@akasakabase.com

コメントは受け付けていません。

Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨 アカサカベースでは、オリジナルの高品質なサウンドグッズ(スピーカー、アンプ等)、 トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないアイデアを活かしたメディアアートをはじめ、 大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。

〒107-0052 東京都港区赤坂7-5-46 #101

TEL:03-3584-0813

営業時間:13:00〜18:00
定休日:土日祭日

MAPを見る

Notice 工房へいらっしゃる場合は、事前にメールか電話で連絡の上お越しください。