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オリジナル小説「秘密の八重歯」第三章 – 3

立川基地にあったアメリカでの生活

キヨとリチャード、そしてノエルの3人は、立川基地(Camp Fincam)のアメリカンヴィレッジで揃って暮らすようになった。リチャードは、立川基地の滑走路を拡張して大型のジェット機が離発着できる軍事ターミナルの建設責任者として、その仕事に精を出していた。

 

立川基地周辺の米軍相手の商店街 総務省より

 

キヨの職場は、横浜の米国領事館から東京の米国大使館別館(港区赤坂葵町2番地にあった南満州鉄道の東京支社だった建物)へと移っていた。別館には領事部や広報部、調達調整委員会などがあり、キヨは広報部に籍を置いて日米の報道機関向けのニュースの仕事も手伝うようになっていた。

 

日常的な日本語教育の仕事からは離れ、大使館に派遣されたCIAスパイの語学試験官へと昇格したのだ。試験官の業務は日々の語学教育ほど忙しくはない。そこで、空いている時間は広報の仕事を手伝うことで、更なるスキルアップに励んでいたのだ。それまでの領事館は、日本に住む米国民の保護や日米通商の促進などを目的としていたのに対し、大使館では日米の政治問題を処理しており、CIAの工作活動とも密接に絡むことが多かった。

 

虎ノ門にあった満鉄東京支社(1936年撮影)

 

ノエルは、立川基地のなかにあるアメリカンスクールに9月から入学した。日本に駐留している米軍兵士の子供たちと一緒に、アメリカ本国の小学生たちと同じ教育を受けることになったのだった。ミシガン州アナーバーで生まれ、ワシントン郊外での短い生活を経て、3歳半から麻布の裕福な家の子として3年間過ごしてきたノエルは、幼い頃から二カ国語を話す環境で育つと共に二重の国籍を持っていた。

 

ノエル・ヤマダ・リチャードソン

 

これが、アメリカンスクールに入学した際の名簿に記されたノエルの正式な氏名である。アメリカンスクールには、ノエルのように米軍兵士と日本人妻の間にできた子供もいたが、その多くは立川基地へと移住してきたアメリカ人妻とその子供たちがほとんどだ。日系のハーフだったノエルだが、とくに差別を受けることもなく元気に学校へ通えていたのは、リチャードの佐官という立場も影響していたのかもしれない。

 

立川基地内のアメリカンスクール 校庭で遊ぶ子供たち

 

ノエルの家は、アメリカンヴィレッジのなかでも大きな敷地に建ち、アメリカ空軍中佐の父とアメリカ国務省(実際はCIA)に務める母という恵まれた家庭で育ったため、何の不自由もない裕福な環境のなかで生活を送っていた。当時の家庭ではラジオと新聞がメディアの主流だったが、キヨが大使館の広報部に移籍したのをきっかけに、いち早くテレビ受像機を購入していた。

 

日本のテレビ放送見たさに、ノエルの家に学校の友達が遊びに来ることもしばしばだった。子供たちに人気だったのは「エノケンのアラビアンナイト」や「サザエさん」などの番組である。音声は日本語だったので、知らず識らずのうちにノエルは幼い頃から通訳することを体で覚えることができたのだった。

 

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