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オリジナル小説「秘密の八重歯」第三章 – 12

メンフィスでの3人の密談

翌日、ノエルは午後3時に「メンフィス」へと向かった。店内に入ると、少年Sがいつもの席に座って煙草をふかしていた。

 

店に入ってきたノエルを見て、Sは左手を上げて「よお!」と合図をした。ノエルは、オーナーにオーダーを告げて飲み物を受け取ると、Sの前の席に座った。

 

「雑誌は、見つかったか?」

「ああ、昨日ここに戻ったら、オッサンがあの雑誌を読んでたよ」

 

「そうか、それで何か言ってたか?」

「うん、どうやらあの小説を読んでたらしく、オレにレースの話をしてきたんだ。レースに出るにはカネがかかるだろうってな」

 

「それで、オマエなんて答えたんだ」

「ああ、カネがかかるって正直に話したよ」

 

「あのオッサン、なんでそんな事を聞いたんだろな」

「それはわからない…ただ、スカイライン2000GT-Bに乗ってるっていうんで、近くに停めてあったそのクルマを運転させてもらったんだ」

 

「おお、スカイラインGT-Bか! どうだった運転した感想は」

「うん、噂通りのクルマだったよ。エンジンはパワーがあって、足回りもしっかりしてる」

 

「なるほど・・それで、今日あのオッサンと会うってのは、どんな話なんだい?」

「まだ、よくわからないんだ」

 

Sは、それに対して頷いてから、小声でこう言った。

 

「それで、昨日の話の続きなんだが、“野獣”(小説『血まみれの野獣』)のなかで、主人公はどうやって現金輸送車を襲うんだ?」

「まず、日野の8.5tトラックと、トヨペットクラウンを盗んで改造を施すんだ。ナンバーと車検証を改ざんしてから、トラックは色を変えてクルマが載せられるように改造する。クラウンのほうはパトカーそっくりに色を塗り替えて、回転灯とサイレンも取り付ける」

 

「おお・・それで?」

「主人公が狙うのは、競馬場に出入りする現金輸送車だ。ダービーの当日には、多額の現金が運び込まれる。そこで、その現送車の現金6億円を強奪する計画なんだよ」

 

ノエルは話を続けた。

 

「ダービーの前日、競馬場に忍び込んだ主人公は、芝コースの下に爆弾を仕掛けるんだ。リモコンで爆破する仕組みになっている。そして、レース当日に偽装パトカーで競馬場近くで待機するんだ。ダービーの実況はカーラジオで聞けるから中の状況は手にとるように分かる」

 

少年Sは、身を乗り出すようにして聞いている。

 

「他に、クルマには警察無線も傍受できる受信機を積んであるから、警察の動きもキャッチできるようになっているんだ」

「用意周到だな」

 

「うん、服装は演劇用に売られている警官の格好で武装しているから、ちょっと見には本物のパトカーとお巡りにしか見えないんだ」

 

「なるほど」

「そして、ラジオの実況中継で馬々がゴール寸前になったとき、ダイナマイトのスイッチをオンにする。すると、芝生コースはサラブレットもろとも吹き飛ばされて、競馬場は大パニックになるんだ」

 

「おお・・」

「ちょうどその時、競馬場に向かって走ってくる現金輸送車が来るのを見て、主人公は偽パトカーのサイレンを鳴らして現送車を停車させるんだ」

 

Sは、目を輝かせてノエルの話に聞き入っている。

 

「この現送車には本物のパトカーが前後に2台付いて護送してるんだが、その警官たちを機関銃で射殺しちまうんだよ。それで、現送車のタイヤを銃で撃ってパンクさせ、怯えて何もできない行員をよそに現金6億円が入ったジュラルミンケースを3つ奪って偽パトカーに運び込むんだ」

「なるほど・・」

 

「それから、数百メートル先にある雑木林に待機させていたトラックまでパトカーを走らせると、パトカーごとトラックに積み入れて、警官の服装から作業員の格好に着替えた主人公は、まんまと検問をくぐり抜けて無事に逃走するっていう話だよ」

「よくできたシナリオだな、しかし、ちょっとスケールがでかすぎる」

 

府中の東京競馬場 JRA所蔵

 

ノエルがそれに頷いた時、センパイOが店に入ってきた。

「よお、2人一緒だったのか」

Oはそう言うと、オーナーに飲み物を注文すると、それを抱えて2人のテーブルの隣りに座った。

 

「ちょうどいい、2人と話がしたかったんだ」

そして、ポケットから出した煙草に火を付けて、煙を吐き出したあとでこう言った。

 

「昨日、“ノエ”には言ったんだが、こいつがレーサーを目指してるのはオレも知っている。オレの愛車で昨日、その腕前も体験済みだ。しかし、知っての通りレースに出るにはカネがいる。それも、ハシタガネではどうにもならない。ある程度のカネがないと、一流のレースに出ることは出来ないだろう?」

 

センパイOは話を続けた。

「そこでだ、イッパツでかいヤマを踏んで、その大金を手に入れようってのがオレの話だ」

 

「でも、どうやって?」

少年Sの質問にOは答えた。

「オレは競馬が好きでね。2人も知ってるとは思うが、大穴を当てて今は羽振りよくやっている。しかし、所詮はあぶく銭だ。数年も経てば使い切っちまうのは目に見えてる」

Oは、小声になってこう言った。

「だから、競馬場の現金輸送車を襲うんだよ」

 

それを聞いたノエルとSは顔を見合わせた。そして、少ししてSが口を開いた。

「あんた、“野獣”の小説を読んだのかい?」

 

Oは、首を振ってこう言った。

「現送車を狙うのは、前から考えてたことだ。ただし、そのヤマを踏むには最低3人は必要だ。幸い、クルマや単車の運転なら全員できる。あとは、オレがやり方を考える」

 

それを聞いたノエルが質問した。

「分け前は…どうすんですか?」

 

Oは、ノエルとSの顔を確認した上で笑みを浮かべながらこう言った。

「分け前か? きれいに3等分しようじゃないか。このヤマはでかい・・もし成功すれば、ヤマ分けしたって一生食っていけるぐらいのカネにはなるだろう」

 

こんどは少年Sが訊ねた。

「それで、いつやるんですか?」

Oは、すこし遠くを見る目をしてからこう言った。

「まあ、あせる必要はねえさ・・・ちょいと時間をくれれば、オレの方できちんと策は考えておくよ。また来週、ここで会おうぜ」

 

Oは、そう言い残すと2人分の勘定を払って店を出ていった。そこに残されたノエルと少年は、しばらくOの後ろ姿を目で追ったあと、それぞれ思い思いの考えに浸っていた。

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