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オリジナル小説「秘密の八重歯」第三章 – 13

学生運動が盛んな時代に計画された犯行

この年、1968年は日本だけでなく、世界的にも動乱が相次ぐ年だった。プラハの春、キング牧師暗殺、5月革命、そして日本では1月の佐世保エンタープライズ寄港阻止運動にはじまって、3月に起きた東大紛争でそのうねりはピークに達していた。

 

ベトナム戦争に反対する世界中の若者たちは、大規模なデモや集会、反戦運動を繰り広げるようになり、大きなうねりをもって世界中を席巻していく。若者たちの不満は、戦争反対、人種差別、貧富の差への不満へと飛び火していき、やがてそれはイデオロギー論争へと発展していった。

 

フランスの5月革命  Le pouvoir est dans la rue

 

資本主義社会に幻滅した彼等は、新しい国家のあり方として社会主義を理想郷として掲げるようになっていく。活動家たちの中枢には社会主義論者が存在したが、その背後には影で彼等を支援する組織が暗躍していた。東西の冷戦時代にCIAと諜報戦を繰り広げていたKGBのスパイたちである。

 

ノエルの父、リチャードが所属する米空軍立川基地が、その拡張をめぐって反対運動の矢面に立たされてきたことは既に述べた。砂川紛争が社会問題化することで、米軍は立川基地の拡張計画は断念し、すぐ近くにあった横田飛行場の滑走路を大幅に拡張して、軍事航空運輸サービスを横田飛行場へ移転した。これにより、リチャードの勤務地も横田基地へと移っていた。

 

一方の母、キヨが所属するCIAでは、各国のこうした学生運動を封じ込めるために、警察と協力しながらあらゆる手を尽くしていたことは意外と知られていない。外交官、所管省庁、ロビィスト、ヘッドハンター、大手企業、通訳といったあらゆる職種に就いていたCIAのスパイたちは、水面下でそれぞれの工作活動に勤しんでいたのだ。

 

国際政治のもとで行われる外交圧力はもとより、キヨも関わっている情報操作から賄賂、恐喝といった黒い手段に至るまで、水面下でCIAが関与してきた工作は数え上げたら切りがないだろう。政府がもっとも危惧するのは、反政府運動によって国家が転覆してしまうことだ。それを阻止するためには国家権力から秘密組織に至るまで、どんな手を尽くしてでもその芽を摘まねばならない。

 

しかし、そうした工作が明るみになれば、国民の不満は大いに高まり、さらなる政権不信の渦が広がるのは避けられなくなる。その司令を出した者の責任は重大である。いずれ失脚させられてもおかしくないのは自明のことだからだ。それだけに、こうした任務に関わる者にとってはその活動はもちろん、自分の本当の姿さえもが秘密であることは、その道を選んだ者の宿命なのだ。

 

ノエルと少年S、そしてセンパイOがメンフィスで密談してから一週間が経ち、ノエルとSはOに呼び出されてふたたびメンフィスに集まった。そこで落ち合った3人は、Oが住んでいる国立の一軒家へとOが運転するスカイラインGT-Bで向かった。敷地の割には小さな平屋建ての家だったが、庭が広くて屋根付きのガレージがある。一人暮らしには十分すぎる環境だ。

 

広い庭のあるログハウス ※BESSの家 所蔵

 

ガレージにクルマを駐めたOは、2人を自分の家の中へと案内した。木造のログハウス風の建物だ。Oは、部屋の中心にある広い居間に2人を通すと、冷蔵庫からビールの大瓶と棚からグラスを3つ出してきてそれをテーブルに運んでからこう言った。

 

「さあ、まずは乾杯だ」

「いただきます」

 

ビールを飲みながら部屋を見渡すと、そこには生活臭が見事に消されている。アメリカンヴィレッジの比較的広い家に住むノエルにとって、そこはどことなく自分が生まれたミシガン州の香りが漂う空間のように感じられた。一方の少年Sにとって、そこは憧れていたような男の部屋だった。

 

少年Sは、国分寺市戸倉の一軒家で白バイ警官の父と母、妹の4人家族で住む、中流の一般家庭で育った。そんな彼にとって、息子の非行が知られると出世が閉ざされてしまうが故に自分を押さえつけようとする父や、世間体ばかりを気にして自分を少年のように扱う母のいない暮らしは、まるで楽園のように思えたのだった。

 

センパイOは、大きなヤマの計画について話し始めた。この場所なら、人目を気にする必要がない。

 

「例の計画だが、まず付近の銀行に目を付けて、朝からそこを見張って現金輸送車の後を追うんだ。クルマが向かう先と、そのルートを調べるのが目的だ。クルマの向かい先が分かれば、現金の額が読める。もっと重要なのはルートだ。人通りが多く、警備の多そうなルートは避けたほうがいいだろう」

 

ノエルとSは、黙ったまま頷いた。

 

「そこで、3人で手分けをして、目ぼしい銀行の現送車を追って、どの銀行とルートが良いかを調べたいんだ。だが、それにはクルマがあと2台必要だ。いつも同じクルマでは怪しまれるからな。そこで相談だが、2人には自分たちが乗るクルマを調達してもらいたい」

 

それを聞いたSは、こう言った。

 

「クルマなら、すでに1台あります」

「ほう、どんなクルマだ?」

 

「昨年の12月に、ひばりが丘団地で盗んだスカイライン2000GTです」

「おう、オレと同じじゃないか・・色は?」

 

「グレーっぽい銀色です」

「なるほど、オレのは白だからそれは使えそうだな」

 

「ただ、盗んでからシートカバーを被せたまま、しばらく乗ってないんです」

「何故だ?」

 

「オレの大事なクルマだからですよ。窃盗の時効が成立するまで大事に保管してるんです」

その話を聞いたOは、ニヤリと笑ってこう言った。

 

「このヤマがうまく運べば、大金が手に入る。そうすりゃあ、そんなコソコソすることはない。堂々とポルシェでもロータスでも買って乗り回せるんだぞ」

 

Sは、納得したように頷いた。

 

「そうなると、もう1台クルマが必要だ。車種にはこだわらず、適当なクルマを調達してほしい」

それを聞いたノエルはこう言った。

 

「もう1台はバイクでは駄目ですか? バイクなら、レーシングチームに使ってないのが何台かあります。それを借りるくらいのことは簡単です」

「そうか、それならそれでもいいだろう」

 

Oは、そう言うと2人に近隣の目ぼしいとされる銀行のメモを渡した。そのメモには、国分寺の1行、立川の2行の合計3つの銀行名が書かれていた。さっそく3人は、次の週から各銀行の現金輸送車の動きを調べ始めた。ノエルが借りたホンダのカブCM90と少年Sが盗んだスカイライン2000GTは、2人で交代しながら運転し、センパイOは自分の白いスカイラインGT-Bに乗って、現金輸送車の追尾を始めたのである。

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