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オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 9

もう一つあった現金輸送コース

ノエルは、今日気がついた留意点を頭の中で整理しながら、ブルーバードを運転して小金井の本町団地へと向かった。そして、団地内に停めてあるホンダのカブに乗り換えると、国立の駅前にある喫茶店に入った。いつもなら、報告のためにすぐセンパイOの家へと向かうところだが、この日に関しては11時頃に来るようにと言われていたのだ。

 

1964年型 ホンダカブCM90 ※WEB Mr.Bikeより

 

喫茶店で珈琲を飲みながら、ノエルは一人で考えていた。もし、現送車にいつもと違うルートを通られたら強奪は失敗する。考えられるもう一つのルートは、南町二丁目の交差点を右折して府中街道へと抜けるコースだ。さっき、現送車が銀行へと帰る時に通った道である。ノエルは、あの南町二丁目の交差点が強奪成功への大きな鍵を握ると考えた。

 

あとは、どうやって白バイに扮する実行犯へ現送車の位置を知らせるかだ。少年Sがいないとなると、すべてを一人で行うことも想定しなくてはならない。現送車を追尾していたのでは絶対に間に合わない。それならば、現送車の前を先行して走って、バックミラーからターゲットが交差点を直進するのを確認してから、どこかで白バイ警官に変装しなくてはならず、それではとても間に合いそうにない。この犯行には最低でも2人必要だ・・ノエルはそう確信したのだった。

 

喫茶店で時計を見ると、時刻は10時半を指していた。ノエルは珈琲の会計を済ませると、センパイOの家へとバイクで向かった。Oの家には10時50分頃に到着した。ノエルが到着したのと同時に、Oの家の庭からは、黒い外車が出ていくところだった。

 

運転手は黒い帽子をかぶった男で、クルマのナンバーを見ると、平仮名ではなくアルファベットが表記されたナンバーだった。ノエルにとっては見慣れたナンバープレートだ。白地に緑字でY(駐留軍人・私有車) の表記がされていたからだ。

 

米軍基地の近くで見かけるアルファベットの白ナンバー Photo by くるまのニュース

 

ノエルはエンジンを切ってバイクから降りると、その場で煙草を取り出してからライターで火を付けた。何故、Oの家から米軍のクルマが出てきたのだろう? ノエルは疑問を抱いたが、吸い殻を捨てて足で火を消すと、Oの待つ庭にバイクを押しながら入っていった。居間から窓越しにノエルを確認したOは、右手を上げて居間へと来るようにと合図をした。ノエルが挨拶をしてOのいる場所へと進んでいくと、Oは居間のテーブルに置かれていた無線機を片付けながらこう言った。

 

「今日は、府中署では大きな動きはなかった。パトカーが1台、府中火葬場と多磨霊園の周辺を巡回しただけだ。そっちのほうはどうだった?」

「大きな変化はありません。いつもと同じ時間に出発してコースも変わらず、同じ行員たちが現金を東芝へ運び込みました」

 

「怪しまれるようなことは無かったか?」

「だいじょうぶです。今回は違うクルマを使ってるし、運転手や行員を見るかぎり、不穏な素振りは見られませんでした。ただ、気になったことが一つあります」

 

「何だ?」

「東芝から銀行へと戻る現送車を追ったところ、いつもと違うコースをクルマが走ったんです」

 

「いつもと違うコース?」

「はい」

 

「帰り道が、現金輸送コースと違うのはさほど不自然ではないだろう?」

「確かにそうですが、自分が思ったのは輸送コースがもう一つあるのではないかということなんです」

 

現在の学園通り ※産経ニュースより

 

Oは、少しの間上のほうを見上げてからこう言った。

「なるほど・・良いところに気がついたな。確かにノエが言うとおりだ。たまたまいつも同じコースを走っているようだが、道路の状況によっては別のコースを通ることも考えられる」

「はい、もし仮にヤマを踏む日に現送車がもう一つのコースを選んだら、その日の計画は中止にするべきです。何故なら、国分寺駅南側は人通りが多く、府中街道を行き交うクルマも多くて、とても現送車を襲えそうなポイントが見当たらないからです」

 

Oは、ごくりと唾液を呑み込んでからこう言った。

「わかった・・次回、現送車を追尾する時にはオレも同乗する。次からは、具体的にどのポイントで白バイが待機し、どこで現送車を襲うかも想定しながら現送車を追いかけよう」

「わかりました」

 

「他に気になった点はないか?」

ノエルは、ついさっき目撃した黒い外車のことが頭を過ぎったが、そのことには触れずに“ありません”と答えた。得体のしれない不気味な影と言われればそうかもしれない。しかし、ノエルにとっては、そうした闇の世界への恐れなどではなく、本能的な防衛意識・・言わば、いつ朽ちてもおかしくない吊り橋の枯木を踏むようなことに思えたからだった。

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