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オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 14

多摩川沿いで繰り広げられたカーバトル

横浜に一晩泊まったノエルとカオリは、翌朝ホテルをチェックアウトすると、スカイライン1500に乗ってカオリのアパートのある小平へと向かった。国道466号線から府中街道を経由して多摩沿線道路をしばらく走っていると、ノエルが運転するスカイラインを全速力で追い越していくクルマがあった。

 

ポルシェ356C カブリオレ

 

白のポルシェ356Cだ。黄色のセンターラインを越えて、ブォーッという低いエンジン音を響かせながらスカイラインを抜き去っていく。反対側から対向車が走ってくる間をすり抜けて追い越す危険な走りだ。助手席のカオリは、“キャア”と悲鳴をあげて目を覆った。

 

「なんだよ、このポルシェ!  ここは追い越し禁止じゃねえか」

ノエルはそう吐き捨てて、ダブルクラッチでギアを一段落とすとスロットル全開でポルシェを追った。ポルシェも抜かれまいといっそう加速して多摩川沿いの細い道を駆け抜けていく。

 

「ねえ、無理しないで」

カオリはそう言って注意したが、心に火が付いてしまったノエルは一向にスピードを落とそうとしない。2台のクルマの馬力からするとポルシェのほうが数段上だ。スカイラインは出力で劣るために直線道路での不利は否めない。

 

 

少し車間が開いたものの、ポルシェが急に減速したために一気にノエルの射程距離内に入った。前を行くクルマを追い越すタイミングを逃したと見るや否や、ノエルはアクセルを全開にして一気にポルシェとその前の1台を追い越した。反対車線のクルマがクラクションを鳴らして急ブレーキを踏むなか、追い越したクルマとの間を縫う間一髪のタイミングだった。スリルの粋を超えた命がけのカーバトルである。

 

ノエルはかまわず全速力で土手沿いの直線道路を走り続けた。そしてクルマが工事現場の前を走り抜けようとした刹那、左から1台のバイクが突然飛び出してきた。ノエルは急ブレーキを踏んだが、工事現場からはみ出している砂利でタイヤがロックしてスリップが止まらない。咄嗟にハンドルを切ってロックを外したが、その反動で制御を失ったクルマは大きくスピンした。対向車が間近にいたら大事故になってもおかしくない状況である。

 

幸い、他のクルマを巻き込むこともなく、スカイラインは運転席のドアをガードレールにぶつけて止まった。砂埃が舞い、ディスクブレーキからは白い煙が出ている。ノエルは、道と反対を向いているスカイラインのギアをローに入れると、ガードレールにめり込んだドアを無理やり外してクルマを一回転させた。

 

そして、まわりのドライバーが驚いて見つめるのを横目にふたたび元のコースに戻って走り出した。助手席のカオリを見ると、事故のショックで気を失っているようだ。しかし、ガードレールに衝突したのはノエルが乗った側のドアだ。彼女に怪我はないはずである。

 

ノエルは、先ほどの事故シーンを頭のなかで何度も思い出しながら帰り道を走った。一瞬の出来事がスローモーションを見るようにハッキリと脳裏に焼き付いている。しばらくして意識が戻ったカオリは、事故の記憶が蘇ったのか、“気持ちが悪いから降ろして”と言って南多摩駅近くでクルマから降りた。ノエルもクルマを降りようとしたが、運転席のドアはつぶれていて開かない。体を移動させて助手席のドアから降りたノエルは彼女の後を追った。

 

カオリは、少し先の道路の脇にしゃがみこんで下を向いていた。

「ごめんよ、オレが悪かった」

「怖かった・・」

カオリはそう言って、すこし顔を上げた。涙が頬を伝って地面にこぼれ落ちていく。ノエルは、彼女の背中を撫でながらしばらくそこで介抱した。そして、数分後にやっと立ち上がったカオリを南多摩駅まで送っていくと、改札口でその姿が見えなくなるまで見送った。

 

ノエルは、クルマを停めた場所まで歩いて戻り、事故で派手に凹んでしまっている運転席のドアを見た。“こりゃあ重症だ・・” ノエルはそう呟いて助手席から運転席に戻ると、小金井の本町団地へと向かってクルマを走らせた。そして、無事に目的地まで辿り着くと、スカイラインにシートカバーをかけてその場を後にした。

 

助手席には、カオリが落としていったイヤリングの片方とハンカチが残されていた。

 

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