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オリジナル小説「秘密の八重歯」第五章 – 3

銀行への脅迫状とダイナマイトの偽装工作

賭博師Oは、黒い帽子の男からの指示で銀行へ送る脅迫状と、ダイナマイトに見せかける発煙筒の偽装工作に取りかかっていた。脅迫状には、雑誌の活字を原稿用紙に切り貼るという、今まで多摩農協へ送ってきた脅迫状とは異なるやり方を使った。この活字の切り貼りに使ったのは、近所のゴミ置き場に捨ててあった『近代映画』の7月号と、無線機好きのOの愛読書『電波科学』の7月号である。

 

 

近代映画 1968年7月号(左)と電波科学 1968年7月号(右)

 

以下が、脅迫文の内容である。

 

ー「三百万 この ふろしき に いれ いつも 窓口 に いる 女の子 が 整ふく のまま 左り手 に もち あるいて 七日の よる 五時三十分 に そこを でて 駅 に 三十三分 に 着き 電話ボックス の 前 に 六時 まで たち その後 小金い の 第二じょう水場に 六時三十分 までに つき そこで まっていろ もし約束 を やぶれば すがも の うち は ばくは する

 

ダイナマイト は 小さい 方だが 未だ 八本 ある 小さくても いりょくは すごいぞ 手せい バクダン とは 少しちがう 時げん そうち は 正かくな もの を 作り上げた 長時間で正かくな もの で やれば どんな ところでも ぼくはできる 三日前に山で ためしてみた

 

もし けいさつに しらせたり いうとうりにしなければ いく人か ばく殺してから また 場所と じかんを しらせる やると なったら みんなで 一どに 大バクハツ させる マイトがなくなっても いくらでも、だせる あなたのような人に、こじんてきに うらみはないが やると いったら必ずやる うそはない こんどは じっけんしても いいぜ 土ようびだが がまんして くれ」ー

 

Oは、はじめは雑誌記事の活字を使って原稿用紙のマスを埋めたが、途中から面倒くさくなって手書きに変えている。脅迫状が入った封筒には、鳳凰の絵が描かれた紺色の風呂敷が同封された。脅迫状宛名にある支店長の名前と、文中にある巣鴨の家については、Oが事前に銀行へ電話をして事務員から住所氏名を聞いて調べていた。

 

当時は12月といえば、お歳暮のために銀行の支店長名や自宅の住所を聞くための電話が入るのはごく普通のことだったのだ。電話を受けた銀行の事務員は、何の疑問も持たずに支店長の個人情報を電話の主に伝えたのである。Oは、この脅迫状を12月5日の深夜に、国分寺市内にあるポストに速達扱いで投函した。

 

実際に送り届けられた脅迫状の入った封筒

 

12月6日、日本信託銀行には速達の郵便物が支店長宛てに届いた。封筒の裏には、国分寺市戸倉町一〜二二 高木 門と表記されていたが、無論これは架空の住所氏名だ。日本信託では、すぐに110番通報をして警察に連絡を入れている。通報を受けた小金井署では、警視庁捜査一課に応援を求め、現金受け渡し指定日の7日に国分寺駅北口と小金井第二浄水場に多数の捜査員を張り込ませた。

 

そして、脅迫状に従って女子行員に扮した婦人警官に現金に見せかけた風呂敷包みを持たせ、国分寺駅北口から小金井第二浄水場へと時間通りに向かわせたが、犯人らしき人物は現れなかった。

Oの自宅に整備されている業務用無線機で、小金井署の警察無線は傍受されていた。警察の大まかな動きを、Oは把握することができていたのだ。

 

日本信託では、7日の始業前に全行員に対して脅迫状の内容を伝えている。行員たちには、以下の注意事項が言い添えられていた。

 

「銀行は拒否します。犯人側からどんな反応があるか分かりませんので、気をつけて欲しい。支店の内外で不審な荷物、特に時限爆弾は、中からカチカチと時計のような音がしますから、十分に注意して下さい」

 

発煙筒のハイフレヤー5に巻きつけられた配線図 電波科学 1968年7月号より

 

Oは、警察無線を傍受しながら、発煙筒のハイフレアー5に祇を巻きつけて本物らしくする加工を施していた。その祇には、配線図のような図が書き込まれている。『電波科学』7月号に記載されていた東芝のカラーテレビ12CP型の配線図である。Oは、このページを切り取って発煙筒に巻き付けている。大意はないが、東芝の冬のボーナスを狙うことを示唆する、ちょっとした悪戯だ。

 

また、発煙筒には銅線をグルグル巻きにして磁石を取り付けた。現送車のアンダーカバーに磁石でくっ付けて、あたかもダイナマイトがそこにセットされていたかのように装うための工作である。こうして、銀行への脅迫状とニセのダイナマイトの偽装工作は、Oの手によって着々と進められたのだった。

 

実際に使われたダイナマイトに見せかけられた発煙筒

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