オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 16 2021.04.22 NOVEL 隕石がもたらすミステリアスなパワー キヨがマークしたMの足取りによって浮上した歯科大学の研究室では、Y氏が拾った隕石をめぐって科学的な分析が行われていた。主にその分析を行っていたのは、研究室で助教授を務めていたTだった。Tは物理学にも精通しており、医療はもちろん、その研究分野はサイエンス全般と幅広かった。 &nbs... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 15 2021.04.22 NOVEL 新たなターゲットの後を追う キヨは、Y氏宛への手紙を出した翌日には、歯科技工士Mの見張りをはじめていた。Mの動きは、住宅を兼ねているらしい作業場の外からしか見ることができない。数日間はとくに変わった動きは見受けられなかったが、それから一週間ほど経ったある日、Mがいつもの格好とは違う背広姿に茶色のカバンという姿で作業場... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 14 2021.04.21 NOVEL 一通の手紙が、青年の心に火を灯す キヨからの手紙は、数日後にY氏の元へと届いた。手紙を読んだY氏は、突然のキヨの留学の知らせに少々落胆したが、喫茶店で自分が撮ったキヨの写真を見ると、心の奥の方で蝋燭の火が灯ったような胸の高まりを感じたのだった。それは、尋常小学校4年のときに、地元の神社で盆踊りをする同級生を見て初めて... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 13 2021.04.19 NOVEL 心に咲いたサクラも儚いのか キヨがフィルムを送ってから2日後、ふたたびCAPを通じてGHQ高官から封筒が届いた。封を開けると、キヨの成果を称える手書き文とともに、現像焼付けされた写真が入っていた。空地で撮影した歯科技工士Mの写真である。写真は、GHQ内のラボにより、その顔がはっきりと確認できるサイズまで拡大されていた... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 12 2021.04.18 NOVEL 浮かび上がってきた、もう一人の男 翌々日、キヨは武蔵野大地から清流が流れる「真姿の池」のほとりでY氏から聞いた話を、細かく英文で便箋に記すと、それを封筒に入れて国分寺駅で待ち合わせていた諜報員に手渡した。その諜報員はこうした秘密文書やフィルムを専門にあつかう運び屋で、暗号化されていない文書は必ず彼らを通して届けるのが... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 11 2021.04.16 NOVEL 閉ざされていたパンドラの箱を開いた清冽な水 「珈琲ボレロ」を出たY氏とキヨは、自分たちの住むエリアとは反対側の南へ向かって歩きはじめた。北口にある恋ヶ窪の森林で起こった一件もまだ記憶に新しかったし、もう少し話したいという欲求をお互いに満たすには、一緒に歩ける距離がすこしでも長いほうが良かったからだ。 ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 10 2021.04.15 NOVEL 珈琲の甘く苦い芳香とヴァイオリンの音色 Y氏とキヨが偶然会った喫茶店(実際には、キヨが偶然を装って入ったのだが)は、国分寺駅南口にある三菱財閥、岩崎家の別荘近くにあった。入口の看板には「珈琲ボレロ」とある。二人は、この喫茶店で午後2時に待ち合わせた。 キヨは、美術学生風のボーイッ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 9 2021.04.14 NOVEL スパイとして初めて味わった複雑な思い 恋ヶ窪の森林で起こったことは、Y氏にとってもキヨにとっても、その後の生活に少なくない影響を与えていた。いま、自分たちが生きている世界は、GHQの占領下にあるという紛れもない事実。とくにY氏にとってあの日の出来事は、“目に見えない巨大な組織が闇に潜んでいる”という不気味さを感じさせ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 8 2021.04.13 NOVEL 懐の深さと器量の大きさを互いに感じあう キヨとY氏は、急いで恋ヶ窪の森林地帯から走って遠ざかったが、熊野神社近くの通りに出たところで待機していた米兵2名に呼び止められた。米兵たちは、厳しい目で二人を睨んだうえで英語でこう言った。 「君たちは、ここで何をしていたんだ?」 キヨは、... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 7 2021.04.12 NOVEL 恋ヶ窪の森林にあったクロスロード Y氏の歯科医院は、太平洋戦争中に建った日立製作所の中央研究所近くにあった。国分寺駅の北口から研究所の脇をまっすぐ歩き、熊野神社へと続く通りにあった民家を改装して戦争間際の昭和15年に開業したのだった。 間もなく戦争の空襲で東京都心は焼け野原になり... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 6 2021.04.11 NOVEL 二人を引き合わせたライツ・ウェッツラーの銘品 Y氏が歯科技工士の作業場で1時間ほど話し合っている間、キヨはその作業場の住所と表札を手帳にメモし、GHQから支給されたレンジファインダー式のライカで建物の外観を撮影していた。キヨの家には父親の国産カメラがあって、学生時代にそれを借りて自身が属していた新聞部の写真を撮ってい... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 5 2021.04.10 NOVEL 空から落ちてきた黒海の真珠 オデッサ Y氏の医院が休みの日の週末、キヨは学生風のカジュアルな服装にメガネ姿で歯科医院を見張っていた。Y氏の自宅は診察室の2階にあり、玄関前の庭には常緑樹が生い茂っていたので張り込みをするキヨにとっては都合が良かった。朝の9時から張り込んでいるが、まだ動きはない。 斜向... 詳しくはこちら