Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨 アカサカベースでは、オリジナルの高品質なサウンドグッズ(スピーカー、アンプ等)、 トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないアイデアを活かしたメディアアートをはじめ、 大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。

オリジナル小説「秘密の八重歯」第二章 – 4

異国で揺れ動いた恋の振り子 Y氏は、遠いアメリカのミシガンで健気に生きているキヨのことを思い、返信を書くことにした。慣れない土地に加えて、占領国からの留学生ということもあり、手紙には書けないような辛いこともあるに違いない。彼女を勇気づけるためにも早めに返事を書かなくては・・。 Y氏は、キヨとの別れのあとに起こった出...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第二章 – 3

海を渡って届いた一通の手紙 それから数カ月後、キヨはミシガン大学へ留学するために横浜から船に乗ってアメリカへと旅立った。キヨは、アメリカへの渡航が許された数少ない日本人の一人だった。戦後間もないこの時期は、GHQが許可あるいは要請する日本人以外は国外に出ることは禁じられていたからだ。   その日、横浜港...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第二章 – 2

限られた時間のなかでの異なる慕情 キヨは、指定された時刻にホテルの玄関前で待っていた。アメリカ人建築家のF.L.ライトが設計したその建物は、西洋と日本のデザインをミックスさせた和洋折衷の外観デザインで知られ、ライト自身がデザインした照明器具やステンドグラスといったインテリアに至るまで、細部まで贅のかぎりを尽くした名建...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第二章 – 1

第二章 夢がかなったアメリカ留学と新たな出会い Y氏が掘りだした隕石がGHQの管理下に置かれてから半年後の9月、キヨはアメリカ政府の支援を得て、アメリカのミシガン州へと留学を果たした。表向きはアメリカ政府による Government And Relief In Occupied Areas(占領地域救済策)という名...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 17

押収された隕石とハイゼンベルクの数式 キヨは、Mの足取りから判明した隕石の在り処を伝えるべく、Mを尾行した日に掴んだ事実を細かなレポートに書き記した。そして、ライカから取り出したフィルムをレポートと一緒に封筒に入れ、CAPを通じてGHQ高官の元へとそれを届けた。     数日後、キヨの元...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 16

隕石がもたらすミステリアスなパワー キヨがマークしたMの足取りによって浮上した歯科大学の研究室では、Y氏が拾った隕石をめぐって科学的な分析が行われていた。主にその分析を行っていたのは、研究室で助教授を務めていたTだった。Tは物理学にも精通しており、医療はもちろん、その研究分野はサイエンス全般と幅広かった。 &nbs...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 15

新たなターゲットの後を追う キヨは、Y氏宛への手紙を出した翌日には、歯科技工士Mの見張りをはじめていた。Mの動きは、住宅を兼ねているらしい作業場の外からしか見ることができない。数日間はとくに変わった動きは見受けられなかったが、それから一週間ほど経ったある日、Mがいつもの格好とは違う背広姿に茶色のカバンという姿で作業場...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 14

一通の手紙が、青年の心に火を灯す キヨからの手紙は、数日後にY氏の元へと届いた。手紙を読んだY氏は、突然のキヨの留学の知らせに少々落胆したが、喫茶店で自分が撮ったキヨの写真を見ると、心の奥の方で蝋燭の火が灯ったような胸の高まりを感じたのだった。それは、尋常小学校4年のときに、地元の神社で盆踊りをする同級生を見て初めて...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 13

心に咲いたサクラも儚いのか キヨがフィルムを送ってから2日後、ふたたびCAPを通じてGHQ高官から封筒が届いた。封を開けると、キヨの成果を称える手書き文とともに、現像焼付けされた写真が入っていた。空地で撮影した歯科技工士Mの写真である。写真は、GHQ内のラボにより、その顔がはっきりと確認できるサイズまで拡大されていた...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 12

浮かび上がってきた、もう一人の男 翌々日、キヨは武蔵野大地から清流が流れる「真姿の池」のほとりでY氏から聞いた話を、細かく英文で便箋に記すと、それを封筒に入れて国分寺駅で待ち合わせていた諜報員に手渡した。その諜報員はこうした秘密文書やフィルムを専門にあつかう運び屋で、暗号化されていない文書は必ず彼らを通して届けるのが...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 11

閉ざされていたパンドラの箱を開いた清冽な水 「珈琲ボレロ」を出たY氏とキヨは、自分たちの住むエリアとは反対側の南へ向かって歩きはじめた。北口にある恋ヶ窪の森林で起こった一件もまだ記憶に新しかったし、もう少し話したいという欲求をお互いに満たすには、一緒に歩ける距離がすこしでも長いほうが良かったからだ。   ...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 10

珈琲の甘く苦い芳香とヴァイオリンの音色 Y氏とキヨが偶然会った喫茶店(実際には、キヨが偶然を装って入ったのだが)は、国分寺駅南口にある三菱財閥、岩崎家の別荘近くにあった。入口の看板には「珈琲ボレロ」とある。二人は、この喫茶店で午後2時に待ち合わせた。     キヨは、美術学生風のボーイッ...

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