昭和のジャズ喫茶 それは甘い珈琲の芳香
はじめて入ったジャズ喫茶は薄暗かった
わたしがはじめて入ったジャズ喫茶は、東京下町の上野にあった「イトウコーヒー」だった。1980年代初頭、当時まだ学生だったわたしは、かねてからその存在を知っていた「イトウ」のドアを勇気を出して開けたのだった。薄暗い店内からいきなり飛び込んできたのは、フリーキーなサックスの轟音と、タバコの白い煙、そしてジムランのスピーカーに向かって2列に並んでいる黒いソファーだった。
モダンジャズかフュージョンか、それが問題だった
1980年代初頭といえば、グローバー・ワシントンJRの「ワインライト」の大ヒットによって市民権を得たフュージョン全盛の時代。この時代は、モダンジャズにこだわる硬派系ジャズ喫茶と、フュージョンもかける軟派系ジャズ喫茶が共存していて、アナクロな印象の硬派系ジャズ喫茶は、ちょっと分が悪い状況だった。女性をデートに誘えるか誘えないかが、その分かれ目である。
フュージョンバンドを組んでいたわたしは、もっぱら新宿の「サンセット」や自由が丘の「チャーリーブラウン」に入り浸っていたが、談話禁止の貼紙のある硬派な「イトウ」もずっと気になっていたのだ。
甘い珈琲と、ほろ苦い青春の思い出
「イトウ」に週一で通うようになったわたしは、フリージャズ好きな店主を気にすることなく、ボールペンで書かれたリクエスト帳にあるブルーノートやコンテンポラリーの名盤を片っ端からリクエストして、深いジャズの森のなかへと入り込んでいった。
それから数年後のある日、硬派な「イトウ」に突然、春がやってきた。目がぱっちりとしたショートカットの女性がアルバイトで入ったのである。薄暗い店内がパッと明るくなったのをよく覚えている。それ以来、「イトウ」を敬遠していたバンド仲間もしょっちゅう来るようになった。お目当てはもちろん、音楽ではなくアルバイトの彼女だ。
「イトウ」の珈琲は、本格的な自家焙煎が売りで、店の奥には専門のスタッフがいて珈琲を煎っていた。わたしが頼むのは、冬はホット、夏はアイスと決まっていた。とくに、珈琲のほろ苦い芳香と、砂糖をたっぷり入れたときの絶妙の味わいが最高にうまかった。
それ以来、「ジャズ喫茶の珈琲は、甘くてほろ苦くなくてはならない」というのが、わたしのなかの決まりとなったのである。
昭和のジャズ喫茶の香りが漂うコルトンボックス
前置きが長くなったが、そんな昭和のジャズ喫茶を彷彿とさせるグッズを見つけたので、今回紹介してみたい。表面には「珈琲 ジャズ喫茶」の大文字とサックスのイラストに「モダンJAZZ」の小さな文字 。側面には木目の透かしが入ったコルトンボックスになっており、全体が灯る仕掛けだ。
サイズは幅20cm×高10cmとコンパクトだが、雑居ビルにありそうなスナックの入口に飾るにはちょうど良い大きさかもしれない。これを、ひとまず愛用する Rogers LS3/5a の上に置いてみた。
AkasakaBaseの談話室が、一気に昭和のジャズ喫茶に変身!
普段は、アメリカンな雰囲気のアカサカベースだが、「ローディ LO-D」の看板と一緒にライトを付けると、一気にその一体が昭和のジャズ喫茶風情へと一変した。ほろ苦くて甘い珈琲を啜りながら、今宵はゆっくりとジャズを楽しむことにしよう。
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