GIジョー用のA2ジャケットの剥がれを補修する‼
The Great Escape 大脱走について
初めてこの映画を観たのは、小学4年の時だった。1971年にフジテレビのゴールデン洋画劇場で2週に渡ってテレビ放送されたのだ。ロードショー公開は1963年だったので、8年後に初めてテレビ放送されたことになる。この映画を初めて観た時の衝撃は未だに忘れられない。
ドイツ軍の捕虜収容所に収監されてきた英米豪の連合軍捕虜たちの緻密な脱走計画が描かれた前半、76人の集団脱走後、手に汗握る彼等の脱走劇が同時進行していく後半は、ハラハラドキドキの連続でまったく飽きさせない。
中でもわたしを夢中にさせたのが、スティーブ・マックイーン演じるヒルツ大尉によるバイクでの逃走劇だ。スイス国境付近で繰り広げられるバイクスタントは、ハリウッド映画史に残る名場面と言って良いだろう。
GIジョーのA2ジャケットをリペアする
さて、このヒーローを題材にした1/6フィギュアは、リアルマッコイズを始め、何社かが製品化している。昨年末、我が家のコレクションに新たな一体が加わったのだが、上着が付いてなかった。21センチュリー社がバイク付きで発売したフィギュアの単体だ。
そこで、GIジョーのアメリカ空軍韓国部隊パイロット用のA2ジャケットを購入して着せてみると、なんと経年劣化で皮がポロポロと落ちてしまうではないか! 数年前に買ったスターエース製のフィギュアでも同様の問題を経験済みで、2015年頃に生産されたこれらA2は数年でビニールの皮が膠着し、着せ替えをしただけで皮に裂け目が生じて剥がれてしまうのだ。
同じ轍は踏みたくないので、今回は半日かけてA2ジャケットの修復メンテナンスに挑戦した。まずは、剥がれ落ちてしまった箇所に水性絵の具を同系色に調合して塗り固める。
乾くとツヤのない燻んだ状態になるので、全体に水性のクリアをスプレーして光沢を出す。この作業を繰り返して完成したのがこちらのA2である。
クリアラッカーは、光沢だけでなくコーティングの役目も果たすので、皮の剥がれ防止にもなる。よく手入れされたホースハイドのA2は、同じような光沢がある。防水加工されたエアロレザー製のA2などがそうである。
GIジョーの素体をベースにしたマックイーンフィギュアの歴史
現在では、実在する俳優をモデルとしたフィギュアは珍しくはないが、この難題に初めてチャレンジしたのが故・岡本 博が率いていたリアルマッコイズ社だ。同社では、本物の米陸軍航空隊(Aramy Air Force 略称A.A.F.)のA2から型をとって新たに製造したA2ジャケットを販売しており、そのこだわり抜いた製品には定評があった。中でもスティーブ・マックイーンが映画『大脱走』で着こなしていたA2には強い思い入れがあったはずだ。
リアルマッコイズでは、この大脱走のヴァージル・ヒルツモデルを1995年に発売して以降、『拳銃無宿』のジョッシュ・ランダル、『ハンター』のラルフ・ソーソンモデル(共にスティーブ・マックイーン)を次々とリリース。2003年にはトイズマッコイとして『ジュニアボナー』をイメージしたレジェンドコレクション、他にも、ハリソン・フォードが扮したインディー・ジョーンズ、マリリン・モンロー、イチローなどのフィギュアを発売して好評を得ている。
マックイーンフィギュアについては、21センチュリー社が『大脱走』に登場するトライアンフ型のバイク付きのヴァージル・ヒルツモデルを2000年に発売。2010年にはトライアド社が『拳銃無宿』のジョッシュ・ランダルモデル、続く2011年には香港の玩具メーカー ハウトゥワーク社が、スーツにコート姿のマックイーンフィギュアを発売する。他にもトイズマッコイ系列のO.K.玩具がマックイーン似のモデルを数種発売しているがこちらは非公式である。
極めつけは、フィギュアの造形では群を抜く完成度を誇るスターエース社が2015年にリリースした『大脱走』ヴァージル・ヒルズモデルだろう。このフィギュアは、ドイツ軍兵士の衣装を追加したヴァージョン、更にマックイーンの私服スーツ衣装を付加したスペシャルエディションが追って発売されている。
バービー人形ベースで1960年代に発売された1/6フィギュア
同じ1/6のフィギュアでは、1960年代にギルバート社が発売した0011ナポレオン・ソロ(ロバート・ボーン)にイリヤ・クリヤキン(デビット・マッカラム)の着せ替え人形があったが、顔などの造形はお世辞にも似ているとは言い難く、こちらはバービー人形をベースに作られたフィギュア。数が少ないこともあって現在では高額で取り引きされている。
バービー人形ベースでは、他にもジェームス・ディーン、マリリン・モンロー、ゴールディ・ホーン、ツイッギー、スタートレックなどの着せ替え人形が各社から発売されていて、造形が凝った作りが主流のGIジョーやクールガールベースのフィギュアと比較して、どことなくレトロチックなのがかえってマニア心をくすぐるものとなっている。
これら1/6フィギュアの特徴は着せ替えができる点で共通している。現在のフィギュア市場は1/12などのもっと小さく精巧にできたタイプや、アニメや美少女系、スターウォーズやスパイダーマンといったキャラクターものの人気が高い。一方でGIジョーやバービー人形などの1/6フィギュアは中高年層には支えられているものの、若年層には時代遅れ感があるのか人気は今ひとつで比較的割安で買うことができる。
しかし、いつ何がきっかけで人気が沸騰するかは誰にも分からない。一部の時計やカメラのように金融商品化してしまうと、純粋な趣味として楽しむことなどできなくなるに違いない。そうなってしまう前に、これら懐かしのフィギュアを買って部屋に飾っておくのも良いかもしれない。酒でも飲みながら少年時代の憧憬に浸ってフィギュアと過ごす時間は悪くないものだ。
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