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アカサカベースの廃盤アワー 第14話

赤い鳥「FLY WITH THE RED BIRDS」

アカサカベースの廃盤アワーでは、現在カタログに載っていないアルバムを紹介するということで、「秘蔵の名盤シリーズ」とは区別して取り上げていこうと思う。廃盤という言葉にはいろいろと解釈があって、現在CDなどで再販されているものでも、オリジナル盤のことをそう呼んだりもするのだが、ここでは再販されずに埋もれてしまっているレコードにこだわっていくつもりだ。

 

 

今回は、もはや伝説と言っても良い日本のフォーク・ロックグループ、赤い鳥のファーストアルバムを紹介したいと思う。赤い鳥は、1974年の解散後にハイ・ファイ・セット、紙ふうせん、ハミングバードという別々のグループへと発展していく玄人好みの本格的コーラスグループで、新居潤子の透き通るような声と平山泰代のチャーミングなボーカルに、それらを包みこむような男性コーラスが折り重なる、優れた音楽性を持つ6人組。

 

以前、秘蔵の名盤 第4話で赤い鳥の4枚目のアルバム「竹田の子守唄」を取り上げた。そこでは日本のフォークロアともいうべき世界観が打ち出されていたが、1st.と3rd.アルバムにおいては、英語の歌詞による曲構成やプロデューサー、アレンジャーに海外の人選をしていることからも分かるように、ワールドマーケットを見据えた布陣で制作されている。

 

とりわけ、このファーストアルバムには、プロデューサーにジャック・ウインズレー、共同プロデュースにアンドリュー・ヒース、編曲・指揮にジョン・フィディー、ソングライターには先のジャック・ウインズレーに加えてトニー・マカーリーらの作曲家を起用。録音はロンドンのトライデント・スタジオで行うという、これ以上ない人材と設備が用意された。

 

 

ここまでの条件が整ったのには理由がある。1969年に行われた「第3回ライト・ミュージック・コンテスト」の全国大会で優勝した赤い鳥をめぐっては、レコード会社各社から熱烈なラブコールが寄せられるが、アマチュアにこだわる彼らは頑なにプロ入りを拒んでいたという。音楽出版社アルファミュージックの代表取締役だった村井邦彦は「アマチュアとして記念にロンドンでLPを1枚作ってみないか」と持ちかけ、メンバーの気持ちをつかみ取る。そうして制作されたのが、この「FLY WITH RED BIRDS」というわけだ。

 

 

コンテストに出場した際に歌ったのが「竹田の子守唄」と「カム・ゴー・ウィズ・ミー」だったことからも分かるように、元々赤い鳥は日本民謡を現代風にアレンジして聴かせたり、当時流行っていたコーラスグループのフィフス・ディメンションのように洗練された英語曲を歌ったりと二面性があった。おそらく、村井の戦略は後にプロデュースするYMOと同様、海外進出をはじめに図ってから逆輸入するかたちで国内で売り出そうというものだったに違いない。そこで、まずは後者(洗練された英語曲)の方向で制作されたのが、この1st.アルバムだったのではないだろうか。

 

A面1曲目は、ジャック・ウインズレーとボブ・セイカーの書き下ろし「アナベラ」ではじまる。ミュージカルの序章曲のような小曲だが、ワウペダルの効いたリズムギターとストリングスが、リードボーカルとコーラスを取り巻くように先導していく緩やかなリズム感が心地良い。

 

続く2曲目の「フール・オン・ザ・ヒル」では、原曲がゆったりとしたテンポなのに対し、早めの三拍子という意表をつくアレンジではじまり、サビになると通常のリズムに戻るというユニークな展開が新鮮さを醸し出す。

 

5曲目の「ザ・ラスト・トレイス・オブ・ラビング・ハズ・ゴーン」は、トニー・マカーリーの書き下ろし曲。ハイテンポで進んでいくキャッチーなメロディとブラスや弦楽器のアンサンブルは、1980年代に流行ったスウィング・アウト・シスターの曲のようで、その先進性にあらためて驚かされる。

 

B面の3曲目「人生」は、後に「翼をください」とのカップリングで大ヒットする「竹田の子守唄」の歌詞違いバージョン。元々は赤ん坊の子守をさせられる幼い子どもの切ない心情を歌った唄だが、都会的なイメージで全体を通そうという意図からなのか、“人生”という抽象的な歌詞に変更されている。

 

B面5曲目の「恋はフィーリング」(That Same Old Feeling)は、元々はファウンデーションズが歌っていた曲で、イギリスの男女混合グループ、ピケティウィッチが同年にヒットさせた明るくポップな曲。1st.アルバムの全体的な雰囲気を象徴するようなトニー・マカーリー作曲の佳曲だ。

 

ところでこのアルバムは、カバーデザインを変えて1972年の9月と1975年の9月に共にアナログ盤で再発されている。デザインは赤や白の無地に近いものだったり、星座をイメージしたものだったりとシンプルなものに変わっているが、オリジナル盤のエアメール風のジャケットがもっとも親しみを感じて愛着が湧くと感じるのは私だけではないだろう。最後に再発されたのは1998年のCDで、この時のカバーはオリジナルに戻っている。そのCDの帯には、次のようなキャッチコピーがついていた。

 

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