アカサカベースが選ぶ、秘蔵の名盤 第13話
沢田研二「Julie ジュリー」
このアルバムは、沢田研二がザ・タイガースに在籍中の1969年12月に発売された、初のソロアルバムである。タイガースを一足先に脱退してアルバムを制作していた、加橋かつみに対抗するかたちで制作されたというだけあって、アルバム内の全曲を作詞 安井かずみ、作曲 村井邦彦、編曲 東海林修という一流作家が手掛けている。大半がバラードという構成も異色だが、とにかく同じ作家陣による佳曲がずらりと並び、アルバム一枚がトータルなコンセプトで編まれているのが素晴らしい。
カバーデザインは、白とグレーにグラデーションされた紙ジャケに、透明フィルムに印刷されたジュリーの顔が重なるという非常に凝ったつくりだ。裏面には、安井かずみと村井邦彦が洋館に佇んだ写真(壁には東海林修のポートレート)の中央椅子に、やはり半透明のジュリーが重ね合わさるという仕組み。このアルバムにかけた渡辺プロや制作陣のただならぬ思いが伝わってくる仕様となっている。
しかも、特大のサイケデリックなデザインのポスターが付属しており、その裏面には夢の島でコートを着たジュリーが佇む写真の右側に歌詞が印刷されているという凝ったものだ。
安井かずみと村井邦彦の共同作業は息の合ったもので、手抜きは一切感じられない。また、この時代ならではのフルオーケストラによる編曲が実に秀逸で、タイガースのようなバンドサウンドとは次元の異なる奥行きのある音世界を構築して沢田の歌を支えている。
1曲目の「君を許す」は、同年にタイガースの曲としてもシングルカットされた曲。歌手、沢田研二としての力量が試されたともいえる曲で、布施明ばりの熱唱がフューチャーされる。
4曲目の「愛のプレリュード」は、バラード調ではじまって途中から転調するミュージカル調の作品。バックを奏でるストリングスが流麗な雰囲気を醸し出す。
6曲目「バラを捨てて」は、ストリングスのピチカートからはじまる小粋な曲。この曲でも流麗なストリングスがヴォーカルを支えるように美しく調和のとれた響きを奏でる。
9曲目の「ひとりぼっちのバラード」は、村井邦彦らしい希望の感じられる明るいメロディーが爽やかな印象を与えるスローバラード。
11曲目「マイ・ラブ」は、コンセプトアルバムの終わりへと導くサブエンディング的な作品。そして、エンディング曲となる12曲目の「愛の世界のために」では、〜世界をもう一度 光と希望に満たしてくれた 君こそ命 何にもかえがたい〜という歌いだして綴られる、慈愛に満ちた愛への讃歌で締めくくられる。
アルバムを聴き終えた印象は、沢田の甘い声の印象もさることながら、愛に関する一連のストーリーが流麗なストリングスと共に綴られていく、一種の歌劇を体験した気にさせられたということ。それにしても、ファーストアルバムからいきなりこれだけの作品を録音するというのは、本人にとってもかなりのチャレンジだったに違いない。
1作目にして完成されたクオリティーを感じさせるこのアルバムは、GS人気が衰退していくなかで新基軸を打ち出すと同時に商業的にも成功を収め、発売後の1ヶ月で10万枚を超すヒットとなった。沢田研二のソロアルバムというより、安井かずみ、村井邦彦、東海林修という稀代の作家3人とのコラボレーション作品という意味合いが強い。1960年代の最後を飾ったジャパニーズポップスの傑作といっていいだろう。
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