斎藤　誠「WALTZ IN BLUE」

好評の裏シティポップ街道、今回は斎藤　誠がデビュー20周年を記念して2003年に発売したカバーアルバム「WALTZ IN BLUE」を紹介する。斎藤が少年時代によく聴いていた曲からピックアップされているが、とにかく選曲が良い。桑田佳祐のサポートミュージシャンとして知られる斎藤だが、このアルバムではギターはもちろんのこと、太くて甘い味わいのヴォーカルもたっぷり堪能できる。

洋楽、邦楽を問わずにオールマンブラザース、ザ・スパイダース、ドゥービーブラザーズ、サザンオールスターズ、ポール・マッカートニー、スティーリー・ダン、ブレッドといったアーティストたちから選ばれた楽曲は、そのどれもが斎藤自身の持ち歌といっても良いくらいに歌い込まれている。

また、アコースティックギターにベース、ドラムといった非常にシンプルな編成による伴奏も秀逸で、過剰な味付けは一切せずに全編がアンプラグドなナチュラルサウンドで統一されており実に大人っぽい。イメージとしては、ごく小さなライブハウスで演奏されているような印象さえ受けるほどである。

斎藤　誠の音楽は、デビューからの数枚にしても桑田佳祐とのコラボにしても、もっとロックっぽくて華やかな印象を受けるのだが、このアルバムのようにアコースティックな編成のほうが彼本来の持ち味が発揮されるように思うのだがいかがだろうか。このアルバムを知ってからというもの、もう何回聴いたかわからないほどの愛聴盤になっているが、まったく聴き飽きることがない。

発売が2003年ということは、すでに20年の歳月が経っているのに、未だに色褪せることがないこのアルバムには、時間を超越した魅力がある。音数が少ない分だけ、斎藤の太くて甘い歌声が心に染み入ってくるのだ。例えば、自然に囲まれた郊外のロッジのなかで、夜一人で聴くには最高の一枚といっていいだろう。部屋には暖炉があって、薪が燃える音と絶妙に混じり合いながら聴けたらこの上ない。

この人の歌を聴いていると、つくづく歌が上手いというのはいいなあ……と思う。いや、上手いだけではなく、なんだか味があるのだ。軽い嫉妬を覚えてしまうくらいに男の色気のようなものが漂っていて、こういう雰囲気を出せるヴォーカリストはなかなかいないんじゃないかなと思う。

最後の曲で1曲だけ、カバー曲ではない斎藤のオリジナル曲「WALTZ IN BLUE」でこのアルバムは終わる。あまりに自然な曲の流れなので、オリジナル曲だと聞かなければわからないくらいに溶け込んでいるが、数々の名曲の後に締めとしてもってきたのは自信以外の何ものでもないだろう。この一曲だけではあるが以下にアップしておいたので、ぜひ一度聴いてみてほしい。

最後に、このアルバムが2003年にCDリリースされてから20年が経つ現在は、空前のアナログ盤ブームだ。その発売20年（デビュー40年）を記念して、ぜひアナログ盤をリリースしてほしい。何故なら、このアルバムほどレコードが似合う作品は他に思いつかないからだ。