裏シティポップ街道を行く 〜シティポップの隠れ名盤〜 その9
尾崎亜美「SHADY」
裏シティポップ街道の第9回では、尾崎亜美が1976年に発表したデビューアルバム「SHADY」を紹介したい。このアルバム発表から1年前、荒井由実の「あの日にかえりたい」が大ヒットしていたということもあり、ユーミンに続く大型新人女性シンガーソングライターという期待を背負って制作された作品である。
尾崎亜美の一連の作品は、そのどれもが一定水準以上のクオリティを有しており、一枚をチョイスするのはなかなか悩まされるのだが、1976年のデビュー時点で1980年以降のシティポップサウンドをすでに体現していたことへの賛辞を込めて、このデビューアルバムを取り上げることにした。
通常、デビューアルバムというと一種の粗さが見え隠れしたり、他の作家からも楽曲提供を受けたりと、アーティストとしての伸びシロが残されているものだが、尾崎亜美にいたっては始めから全曲を作詞作曲するという才女ぶりを発揮しているのだから凄い。編曲を担当したのは松任谷正隆で、オールコンセプション&アレンジメントという役割からも、いかに東芝EMIの制作陣の期待が大きかったのかがうかがえよう。
松任谷正隆による編曲は、セカンドアルバム「マインド ドロップス」でも引き継がれるが、驚くべきことにサードアルバム「ストップ モーション」では、作詞作曲はもちろんのこと、すべての編曲をも尾崎本人が手掛けるという離れ業を成し遂げている。彼女にとっては、おそらくファーストとセカンドアルバムの制作過程で松任谷正隆の編曲手腕に触れられたことは、大いに役立ったに違いない。
さて、このファーストアルバム「SHADY」は、松任谷正隆、鈴木茂、林立夫、松原正樹、斎藤ノブといった凄腕のミュージシャンが伴奏を行ったのに加え、コーラスにハイ・ファイ・セット、AMII’s Armyという名で山下達郎と吉田美奈子までが加わった豪華メンバーで録音されている。
シングルヒットを狙えそうなキャッチーな曲はないものの、すべての曲が丁寧に編まれているのが伝わってくる名作だ。このファーストアルバムをはじめ一連の尾崎亜美のアルバムは、シティポップを語る上では欠かせない作品であるのは間違いないのだが、現在の中古市場では比較的安価で流通しているのが嬉しい。つまり、アルバムを揃えるなら今がチャンスということ。そのクオリティの高さを思えば、いつブームに火がついても不思議ではないし、耳の肥えた海外リスナーたちが、彼女のアルバムを放っておくはずがないと思えるからだ。
まさに裏シティポップ街道にはうってつけの隠れた名盤、尾崎亜美のデビューアルバム「SHADY」をぜひ一度聴いてみてほしい。オープニングのピアノと弦楽器によるアンサンブルに、雷雨の効果音が重なる静かなプロローグから始まる“亜美ワールド”にすこしの間浸ってみれば、その魅力の一端が伝わるはずだ。
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