ムーディーレコードの誘惑 第1話
池 玲子「恍惚の世界」
中古レコードのなかでも、最近人気が上がっているのがムーディーなレコードジャケットのアルバムだ。年に2回日本でも開催されているレコード・ストア・デイでも、その開催時期には往年のセクシー歌謡のレコードが再発されるなど、かなり熱い状況となっている。その極めつけの1枚が池 玲子の「恍惚の世界」である。長らく廃盤だったこともあり、海外マニアの間では十数万円で取り引きされていたという伝説のレコードだ。
数年前にレコード・ストア・デイに合わせてリイシューされ、ふたたび注目されたのでジャケットを目にしたことがある人も結構いるのではないだろうか。内容的には、歌モノというよりはシャンソンのようにオケをバックにした語りのほうが中心で、全編にわたって本人の喘ぎ声が響き渡るというキワモノ的色彩が強い。
このレコードが発売された1971年前後は、奥村チヨ、大信田礼子、辺見マリ、ゴールデンハーフ、山本リンダなどのセクシー歌謡が流行っていた時期だが、池 玲子の「恍惚の世界」はその中でも断トツの異彩を放っている。ステレオで聴くのは憚れるような内容で、まだ家庭用ビデオが登場する前だったことも、こうしたレコードが企画される時代背景があったのだろう。
ムーディーレコードのなかには、ナイトタイム向けのムード音楽(イージーリスニング)なども数多くあり、そうしたレコードのジャケットには、決まって女性たちが艶やかな姿でポーズをとっているものが多い。中古店でレコードをめくっていると、そうしたジャケットが突然出てきてドキッとさせられることがある。色仕掛けに誘惑されて値段を見ると、その高さにも驚かされるというドッキリ二連発を喰らうので覚悟しておいたほうがいいだろう(笑)。
ムード音楽のこうしたレコードは、“エロジャケ”という呼び方が定着していて、他にもエロさはないが美女をフューチャーしたものは“美女ジャケ”と呼ばれて区別されている。こうしたレコードは、中身の音楽についてはあまり重要ではない。わたしも何枚か聴いてみたことがあるが、中身が優れているものは非常に稀である。つまり、こうしたレコードはムードを盛り上げるためのBGMであり、あまり音楽性を主張されてもシラケてしまうということなのだろう。
そして、こうしたエロジャケや美女ジャケとは区別されるべき、正統派シンガーや女優の歌モノなどにもムーディーな雰囲気を持ったレコードは存在する。また、単純にジャケ写がカワイイもの、お洒落なものもあって、そんなレコードと出逢うと衝動的に買ってみたくもなる。あくまで主役はジャケットなのだが、昭和のセクシー歌謡には中身(内容)まで良いものがあるので油断は禁物だ。
そんなジャケット良し、中身良しの二重丸レコードと出会うのは大きな喜びである。現在のように男女平等が当たり前で性的な多様性が求められる社会では、昭和のセクシー歌謡のような音楽はもう出てこないかもしれない。こうした曲の歌詞には異性にとことん媚びたような文句だったり、聴いていて赤面してしまいそうな表現が出てきて、思わずニヤリとしてしまうこともしばしばだ。
新譜では聴くことはできなくても、中古なら二重丸のムーディーレコードと出逢うことができるかもしれない。そんなささやかな楽しみと癒やしを求めて、少しずつおすすめのレコードを紹介していこうと思う。乞うご期待!
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