ヘドバとダビデ「ナオミの夢」

これは、1971年に発売されたイスラエルの歌手グループ、ヘドバとダビデのシングル盤。前年の1970年に開催された第1回東京国際歌謡音楽祭でグランプリに輝いた、原曲の「ANI HOLEM AL NAOMI」を、音楽祭出場のため2人が東京に滞在している一週間の間にレコーディングされたものだ。

ちなみに「ナオミ」は、ヘブライ語で「幸せ」や「和み」を意味し、旧約聖書にも載っている欧米ではポピュラーな女性の名前。ナオミ・ワッツやナオミ・キャンベルなど、外国人スターにも見かけるし、イスラエルでは赤ちゃんに付ける名前として1970年頃に流行った名だそうだ。

さて、この楽曲は、とにかくノリの良いアレンジで、ピックで弾かれるプリプリのベースがイイ感じだ。メロディーラインやアレンジについては、発売された1971年当時のリスナーにも懐かしく聴こえていたに違いない。なにせ、ヴォーカル以外は典型的なテケテケサウンド、つまりベンチャーズ風にアレンジされているからだ。

2人の日本語は、一週間の日本滞在で録音されたとは思えないほどに鍛錬されていて、とてもではないが思いつきのやっつけ仕事では無さそうだ。恐らく、音楽祭にエントリーされる前から裏方が動いていて、歌詞の翻訳から日本語による歌のレッスンまで、肝いりのプロジェクトだったのではないだろうか。

ただし、仮に音楽祭グランプリも含めたプロモーションだったとしても、この歌が楽曲として優れていることには変わりない。それは、多くの歌手やミュージシャンによってカバーされていることからもあきらかだ。

雪村いずみ、ザ・ピーナッツ、トワ・エ・モア、クリスタルキング、葛城ユキ、クレイジーケンバンドといったメジャーどころから、フラワーメグ、いぬいなおみ、Be-2などの知る人ぞ知る系、企画モノの矢島美容室  等々、「ナオミの夢」だけでコンピレーションアルバムが1枚出来てしまいそうである。よほど、日本人好みの詞とメロディだったということだろう。

ひとり見る夢は

素晴らしい君の踊るその姿

僕の胸に ナオミ

ナオミ Come back to me

さあ、あなたもこの曲を聴いて…心のスイッチをONにしてみてはいかがだろうか？