純音楽家 遠藤賢司 エンケンを偲んで
20世紀少年のケンヂはエンケンがモデルだった‼
1999年から2006年までビッグコミックスピリッツに連載された浦沢直樹の漫画『本格科学冒険漫画 20世紀少年』に登場する主人公の遠藤健児(ケンヂ)は、エンケンこと遠藤賢司がモデルとなっている。映画化されて社会現象となるほどのブームとなった映画版『20世紀少年 最終章』には、漁師役としてエンケン本人も出演している(当時62歳)。
この記事を書いている10月25日は、エンケンの七回忌となる命日でもある。その七回忌をひとつの節目として、都内では9月1日〜10月24日までポップアップギャラリー新宿(ディスクユニオン 収納ストア)にて、ポスター展が開かれていた。そして、その展示の終了後には、新宿ロフトにて遠藤賢司 七回忌公演 純音楽の友と題した七回忌ライブコンサートが開催された。出演者にはエンケンにゆかりのある、以下の豪華メンバーが揃った。
湯川トーベン・石塚俊明
友川カズキ
斉藤哲夫
友部正人
鈴木慶一
鈴木茂
佐野史郎
大友良英
森信行
新宿ロフトの七回忌公演に客として参加することに
自分の周りに熱心なファンがいたこともあってエンケンのことはもちろん知っていたが、正直に言うと彼のファンだったわけではない。そこで、今回のライブの前に予習としてサブスクや動画で代表曲を聴いてみた。Youtubeなども観ていくうちに、エンケンの真骨頂はライブにあるのだということがわかってきた。ほのぼのとしたスタジオ音源も良いのだが、円熟味の増した後期のライブ演奏には鬼気迫るものがあって強いカリスマ性を感じたのだ。
ロフト公演では、最初と最後に後期エンケンのライブ映像が流れた。アンプを背中にしょってギターをかき鳴らしながら絶唱する姿をスクリーンで初めて観て、身震いするような衝撃を覚えた。ライブの合間に出演者が語っていたように、エンケンはフォークとロックの狭間にいて両方のミュージシャンを繋ぐ媒介者の一人だったようだ。
ティーンエイジャー時代にプログレやユーロロックに傾倒していた私にとって、彼の音楽は四畳半フォークの範疇では留まりきれない拡がりを感じさせるものだった。ボブ・ディランに触発されてデビューした黎明期を経て、1969年に発売したシングル『ほんとだよ』では、ケルト音楽の影響に加えてフルートやチェロの伴奏などを加味した重厚な音世界が構築されていて驚かされる。プログレッシブロックからアシッドフォークへと繋がっていく潮流からは見落とすことができない類稀な傑作といっていいだろう。
ロフトでのライブは、出演者それぞれがエンケンへの想い出を語りながら、彼のカバー曲を披露するかたちで進んでいった。どのアーティストもそれぞれの持ち味を生かしたパフォーマンスで、ライブとしては非常に見応えのある公演だったことを感想として述べておきたい。この内容については、別の記事で紹介する予定だ。
バーカウンター奥で出会ったエンケンのコレクションアイテム
ライブは出演者が多かったため、3時間半にも及んだので20分ほどの休憩時間があった。ライブ会場からバーカウンターへと向かう途中には、エンケンの使用ギターがズラリと並んでいて、ライブで立ち見をしていたであろう方々がギャラリーの椅子で休んでいた。その間を縫って進んで撮ったのがこの一枚。どのギターも激しく使い込まれているのがわかる。マーチンやヤマハのドレッドノートを好んで使っていたようだ。
さらにバーカウンターを越えた奥のスペースには、エンケンのグッズがたくさん並んでいた。手前のテーブルには存命時のライブチラシが置かれていて、なんと無料で配っている。そして、そのすぐ上にはエンケンが使っていたギター弦が置いてあり、なんとこれも無料で配るという太っ腹な展示である。
次に私の目を引いたのは、ギター弦の奥に置かれていた二足のブーツだった。一見して、これはただの公式グッズの類ではないと感じた私は、売場の女性に尋ねてみた。
「これって、エンケンさんが実際に履いていたブーツですか?」
「はい、そうですよ」
「二足ありますけど、いつごろ履かれてたのでしょう?」
「茶色のほうは、結構若いころだったと思います。このブーツで写っている写真もあるはずです」
「ほう〜」
私は、両方の靴を手にとって見せてもらった。茶色のブーツはだいぶ年季が入っていてヤレ感が強い。これぞエンケンという気もしたが、大きさからして置き場所に困りそうな気がする。
「黒のほうは、晩年によく履いていたと思います」
黒い方のブーツは、それほど痛んではいない。表面はヘビ革のようで作りもしっかりとしている。しばらく考えてから、結局この黒いブーツを買うことに決めた。もう一つ、私の目に入ったのは鮮やかな赤色のジーンズだ。サイズ的にはとても自分が履ける大きさではなく、女性用といっても良いウエストの細さだ。そういえば、今夜の公演チラシにも赤いジーンズを履いたエンケンが描かれている。
「このジーンズも、エンケンさんが履いてたものですか?」
「はい、そうです」
「このチラシに描かれているジーンズと同じものですか?」
「はい」
それが本当なら、たいへんなことだ。稀代のカリスマミュージシャンが履いていたジーンズ…ただそれだけでも十分に価値があると思った私は、このジーンズも買うことにした。気になったグッズはもう一つあった。展示スペースの奥に立てかけられていた、エスビーカレーのホーロー看板だ。彼の代表曲に『カレーライス』という歌がある。私生活でもカレーが大好物だったというエンケンがひそかにコレクションしていた昭和のホーロー看板がこれなのだ。
ホーロー看板にはマニアがいて、すでにマーケット(市場)が存在する。この看板は、裏側にペンキの痕があることからもわかるように、印刷ではなくホンモノに間違いない。しかも、遠藤賢司の私物だったという話も加味すればお宝級の一品の可能性すらある。
そんな訳で、ライブ公演が目的だったはずのこの日は、すっかりコレクターのスイッチに切り替わってしまい、ライブのことなどどうでも良くなってしまった(笑)。ステージの方向からは、何やらノイジーな音が聴こえてくる。買い物に熱中している間に、楽しみにしていた大友良英さんのステージを見損なってしまったようだ(汗)。
グッズ売り場には、この他にもエンケンがコレクションしていたアクセサリーグッズなどがたくさん売られていた。エンケンが集めていたこれらのグッズのなかでも、フクロウ人形をコレクションしていたというのはちょっと意外だった。値段も数百円と良心的である。わたしは、3つのフクロウを選んだ。この他、ディスクユニオンが薦めるライブ盤CDを含めても、ちょっと有名なレストランのディナーコース1食分くらいである。驚くほど良心的な値段には、きっとエンケンの気持ちが込められていたに違いない。
さて、このブログを書くために黒いブーツのタグを見てみると、“Made in England JOHNSONS”とある。ジョンソンズ(JOHNSONS)は、イギリス、ロンドンのパンク、ロックのファッションブランドで、50’sテイストを基本にロッカーズ、テッズ、ロカビリーのテイストを融合させたパトリック・ロイド・ジョンソンがデザインしたものだそうだ。世界中のパンク、ロックンロールミュージシャンに愛用されてきたが、現在は一部を除き生産されていないため、コレクター間で高価で取引されているのだとか…。
なんだか、たいへんな品物を手に入れてしまったようだ。今日(10/25)は、ずっとエンケンの音楽を聴いて過ごした。そして、デビューシングルの『ほんとだよ』に感銘を受けたわたしは、限定2500セットの4枚組CD-BOX『特得箱キングオブワッショイ』なるCDもネットで見つけて購入した。こうして、私は一人のミュージシャン(故人)と運命的に出会ってしまったのである。
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