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昭和の銘スピーカー『サンスイ SP LE-8T』について

オーディオ好きなら誰もが知っているフルレンジの銘機 LE-8T

サンスイが1970年代前半に発売した『SP LE-8T』は、JBLの20cmフルレンジを使った家庭用のスピーカーだ。スピーカーユニットとのサイズ比にしてはやや大振りのエンクロージャーに収められている。直方体の下部にスピーカー、右上部にバスレフを配置したシンプルな構造で、当時は高価だったJBLのスピーカーを手頃な価格で販売するために山水電気が独自にエンクロージャーを設計したものだ。

 

 

組格子のサランネットが目を引くクラシカルな外観

SP LE-8Tの特徴は、何と言っても豪華な組格子のサランネットだ。1965年に発売されたJBLの『L-101(ランサー101)』には複雑な文様をあしらった組格子のサランネットが装備されており、さらにスピーカートップには大理石のプレートを敷くという豪華な仕様で話題となった。このランサーの値段は1台218,000円、2台そろえると初代カローラの新車価格に匹敵するくらいに高嶺の花だった(大卒初任給が25,200円の時代)。

 

そこで、もっと手頃な値段で庶民が買えるJBLのスピーカーとしてサンスイが売り出したのがSP LE-8Tなのである。1973年の発売価格は57,900円(2台、115,800円)とリーズナブルだった。庶民でも手が届く、あこがれのJBLスピーカーという位置づけである。

 

後年、ジャズファンの間で再評価されていったLE-8T

このスピーカーは、1980年代に雑誌『ジャズ批評』の記事で取り上げられた。原宿のジャズ喫茶『ボロンテール』(現在は赤坂に移転)のメインスピーカーとしてJBLのアンプSA660とセットで使われていることが記載されたのだ。因みにその組み合わせは岩手県一関市のジャズ喫茶『ベイシー』店主、菅原氏の推薦だったそうだ。

 

 

オーディオファン層を大別すると、クラシック派とジャズ派に分かれるものだが、後者のファンが支持していたのはジェームス・B・ランシング(ジムラン)が設計したJBLやアルテックなどのスピーカーだ。ロックやポピュラー派のオーディオファンもジムランを支持したことから、その人気と名声は不動のものとなる。時代が推移して音楽ソフトがアナログからCDへと変わっていく時期にいち早くCDを支持したのはクラシックファンだった。

 

交響曲などを聴く際に、レコードのように盤面を裏返す必要がないうえ、ピアニッシモにおけるS/N比の大幅な低減などが支持された理由だろう。一方のジャズファンの間では、相変わらずアナログの人気が衰えなかった。アナログの音質的優位性に早い段階で気がついていたからだろう。この時期、ジャズのオリジナル盤が高騰していったのは音質的にもそれが最良とされたからだ。

 

そして、コアなジャズファンの間で伝説になっていったのが、このLE-8Tだった。わたしは、1986年頃にはじめてこのスピーカーを中古で入手した。忘れもしない、お茶ノ水のオーディオユニオンで11万前後(2本)で手に入れたのだ。わたしが買った実機には、ツイーターとしてJBLの077が追加されていた。ネットワークもJBL製の本格的な2ウェイ改造品だった。使用アンプはサンスイのAU-α907である。

 

 

ボロンテールの音にどうしても近づけないのは何故か?

この組み合わせでモダンジャズを聴いてみると、同時期に所有していたONKYOのモニター2000と比較すると何故か満足な音が出てこない。ネットワークで中域がカットされてしまい、結果としてドンシャリな音になってしまうのだ。試しにボロンテールを訪れて同じレコードを聴かせてもらうと、中高域のバランスが段違いに良いのだ。

 

この差は何なのかといえば、使っているアンプの違いとしか考えようがない。レコードプレーヤーはYAMAHAのGT-750、カートリッジはDENONのDL-103という組み合わせだったので不足はないはず。しかし、ボロンテールのLE-8Tは無改造のフルレンジなのに高域もちゃんと出ているのに対し、自分の2ウェイ改造モデルは中域がやせ細っている。

 

この問題は解決しないまま数年が過ぎ、その間にスピーカーはJBLが周年記念で発売したランサーの復刻モデルS-101、セレッションのSL-6と増えていき、件のLE-8Tは部屋の片隅で保管されていたのだった。ふたたびLE-8Tを使うことになったのは、実家を出て一人暮らしを始めた時だった。1990年頃のことである。私は、実家の部屋に置いてあったオーディオはそのままにして、新しい部屋でこの改造LE-8Tを中心に新システムを組むことにしたのだ。

 

 

そのオーディオセットはアンプがAURAのVA-50、CDプレイヤーはPHILIPSのLHH500という組み合わせだった。VA-50はとても済んだ音でLHH-500との相性も良く、改造LE-8Tを鳴らすには不足のない選択だったと思う。しかし、中域がやせ細った音に満足できなかった私は、LE-8Tへの接続はネットワークを介さずに直接配線することにした。

 

そして、バイワイヤリング接続が流行っていた時流に乗るかたちでツイーターの077にネットワーク経由で配線してみると…これは大正解の結果となった。この状態で1年間ほど使用してみたが特に問題は起こらず、音源はCDに限られたものの、当時よく聴いていたジャズ、ソウル、クラシックの再生に不満を感じたことは一度もなかった(高域が強すぎると感じたときはスピーカー背面のアッテネーターで調整可能だった)。

 

長年の謎がついに判明したSNSの投稿記事

077という強力なツイーターをブレンドした改造LE-8Tには満足していたが、単独で鳴らした際の高域不足の問題に対して、ボロンテールで聴く度に感じるバランスのとれた中高域との違いがずっと頭の片隅で引っかかっていた。ジャズ批評の記事でJBLのアンプのことを知った私は、前出の菅原氏の著作『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択―ぼくとジムランの酒とバラの日々』を読んでいたので、LE-8TがJBLアンプとの組み合わせで真価を発揮することは知っていた。

 

 

しかし、真空管とトランジスターアンプの違いならまだしも、同じトランジスターアンプで何故こうも音が違うのかは長年の謎だった。それが、令和5年の8月にfacebookのヴィンテージJBLコミュニティーにこんな投稿があったのを見つけたのだ。

 

–JBLのヴィンテージ―SPは、SPの+端子にプラスの電圧を加えると、コーン紙が後ろに動く極性になっています。一方、JBLのアンプ(SA-600)は、メインアンプ部が反転アンプになっており、入力と出力の極性が反転します。従って、JBLのヴィンテージ―SPとJBLのアンプ(SA-600)を組み合わせた場合は、アンプにプラスの入力があった時に、SPのコーン紙が前に出る事になります。現在、JBL以外のアンプは殆どが非反転アンプなので、これとJBLのSPを組み合わせた時は、注意が必要です。(原文ママ)–

 

 

この投稿を読んだ私は、ボロンテールの組み合わせ(詳しくは『ジャズ喫茶「ベイシー」の選択』に書かれている)がなぜバランスの良い音で鳴るのかがようやく理解できた。コーン紙が前に動くことをプッシュ、後ろに動くことをプルと言うが、300B真空管アンプを使っていたときにトランジスターアンプとの音の違い(真空管はプッシュプル駆動のため、ユニット前後の動きを制御できるのに対し、トランジスターはプッシュ駆動しかできない)を経験済みなので、この投稿が言わんとすることはすぐに理解できた。

 

つまり、1970年前後のJBL製品(スピーカーユニット単品を含む)の多くは、JBLのアンプを使わない限り、本当の真価を発揮することはできない…何故ならスピーカーユニットのプッシュ(+)に対して他社製アンプの多くはプル(−)信号で駆動させようとするからだ。同じ時代のJBLアンプがユニット本来の性能を引き出すことができるのは、この設計に由来しているに違いない…そう確信したのである。

 

ケーブルの配線を逆位相でつなぐ実験はしていないので、JBL以外のアンプでLE-8Tの音が改善するかどうかは定かではないが、もし素の状態のLE-8Tが手元にあるなら直ぐにでも試してみたい話である。

 

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