夢の「ALFAレコード針」プロジェクト‼
ジャズ喫茶「ベイシー」モデルに次ぐレコード針を作りたい
レコード針メーカーである、JICO社の仲川社長から新しいレコード針についての相談を受けたのは、2023年の夏の終りのことだった。同社が発売したジャズ喫茶「ベイシー」の菅原モデルのことならわたしも知っている。オーディオへのこだわり、その再生音の凄まじさについては右に出るものはいないと言われる、ジャズ喫茶「ベイシー」。そのマスターである菅原氏が監修したレコード針がそれである。
即日完売となったこのベイシーモデルの第2弾に相応しいモデルとは何か? わたしの頭に浮かんだのは、日本が世界に誇る音楽制作の現場の声だった。レコードを再生する側の頂点が「ベイシー」なら、レコードを生産する側の頂点を極めたのはどこなのか? 現在、世界的な再評価が進む日本のシティポップだが、1970年代から80年代にかけて次々に名盤を世に送り出したレーベルといえば、「ALFA」をおいて他にはないだろう。
荒井由実、YMO、ハイ・ファイ・セット、カシオペアといったアーティストたちの作品には、日本独自のオリジナリティあふれる音楽性があった。しかも、そのサウンドは都会的でファッショナブルでもあり、洗練されたものだった。そうした音楽性が認められて、YMOやカシオペアといったアーティストは海外でも注目されて人気を博した。それは「ALFA」という音楽レーベルだから成し得たことであり、40~50年を経た現在でも色褪せるどころか世界的な再評価が進んでいるのは驚くべきことだ。
意を決してALFAの創業者に直談判してみた結果は?
ALFAの創業者といえば、作曲家・プロデューサーとして知られる村井邦彦氏である。わたしは、同級生の友人が元ALFAレコードの社員だったこと、LA在住の知人が村井氏と親交があったことなどもあって、運良く村井氏と繋がることができた。今回のレコード針の話をしてみると、何と二つ返事で「やりましょう」という嬉しい答えが返ってきた。ちなみに、村井氏の盟友であるプロデューサーの川添象郎氏からも励ましのメッセージをいただいて勇気づけられるという一幕もあった。この場を借りて感謝申し上げます。
わたしは、さっそくJICOの仲川氏を含めた3者会談をセッティングした。LAの村井氏、兵庫の仲川氏、東京のわたしの3者を結んだ会談はオンラインで数日後に行われ、和やかな雰囲気でスムースに運んだ。その会談の中で「ALFAの名を冠したカートリッジが良いのでは」「1972〜1985年にリリースされたALFAのレコードを良い音で聴くことのできるカートリッジを作ろう」という話で大筋がまとまったのだった。
村井氏と兵庫県のJICO本社を現地視察
その後、村井氏から紹介されたソニー・ミュージックパブリッシングの見上チャールズ一裕氏(現ALFAレコード代表取締役)らと東京で打ち合わせを行った後、元ALFAレコードチーフエンジニアの吉沢典夫氏にサウンドアドバイザーとして参画いただくことが決まった。
そして、11月中旬にLAから日本へ一時帰国している村井氏と兵庫のJICO本社を現地視察することになった。ソニー・ミュージックの関係者たちも含めた総勢7人による鳥取ツアーである。当日は、鳥取の天気は荒れており飛行機の着陸も危ぶまれるほどだったが、空港に到着すると同時に雨も上がるという幸運に恵まれたのを覚えている。
ヴォーカルが瑞々しく響くサウンドを目指す
JICO本社では、レコード針の工場見学、レコード試聴、製品化に向けた打ち合わせを行った。ALFAレコードの代表的な名曲を試聴するなかで、村井氏からは「やっぱり、ヴォーカルが瑞々しく響く中域が引き立つようなサウンドがいいなあ」という意見をいただいた。目指すべきサウンドメイキングの方向性がハッキリした瞬間だった。
おおよそ3時間弱で工場を後にした我々は、ふたたび空港へと向かう途中に鳥取砂丘に立ち寄ることにした。ここで、村井氏とのツーショット写真も撮ることができた。
カートリッジの試作品をソニー・ミュージックスタジオで試聴
サウンドアドバイザーとして、元ALFAレコードチーフエンジニアの吉沢典夫氏を迎えて、いよいよカートリッジの試聴会をソニー・ミュージックスタジオにて行うことになった。2023年から2024年にかけて同スタジオで数カ月にわたって試聴を重ねて、吉沢氏の率直な意見を伺った。
今回、発売を目指すのはALFA MUSIC創設55周年を記念した限定モデルと、定番モデルという2つのカートリッジである。この2種類のカートリッジの候補となる試供品を順番に聴き比べていくのだが、そのリファレンス用には、吉田美奈子「FLAPPER」をはじめ、荒井由実の「ひこうき雲」、カシオペアの「ミントジャムス」、ハイ・ファイ・セットの「ラブコレクション」などのレコードを使用した。
レコードに刻まれた録音時の空気感が伝わってきた
驚いたのはレコード針を変えるだけで、音源によっては他の針では聴こえないような当時のスタジオの空気感までが伝わってきたことだ。それを良しとするか否かはまた別の話なのだが、やはりプロのマスタリングスタジオというのは妥協を許さないように作られているのだなと妙に感心させられた。
最終的に選ばれた4つのカートリッジが海を渡る
吉沢氏監修のもとに厳選された4つのカートリッジは、海を渡ってアメリカ西海岸のロサンゼルスまで旅立った。LA在住の村井氏に試聴していただいて最終判断を仰ぐためでる。それから数週間後に、返ってきた答えはスタジオでもっとも反応の良かったタイプと同じだったと後から聞かされた。これで、選ばれたカートリッジにはALFAの魂が宿ったといって良いだろう。
ALFAの赤いロゴがフロントに配された2つのカートリッジ
カートリッジの仕様が確定するのと同時に、カートリッジのデザインが出来上がった。レコード針の向きとは逆に配された三角形の赤いロゴマークからは、確固たる存在感が伝わってくる。日本が世界に誇る高い音楽性を約束したように、このカートリッジの品質もALFAが保証しているのだと言わんばかりの堂々たる意匠だ。
ALFA 55周年記念カートリッジについての詳しい仕様については、ここをクリックしてほしい。開発に向けた熱い思いや、村井氏、吉沢氏、仲川氏、そしてわたしからのコメントも掲載されている。このカートリッジは、2024年4月17日から予約受付が開始され、2024年7月から出荷がはじまる予定だ。この『ALFA MODEL』で、あなたの好きなレコードをぜひ楽しんでみてほしい。日本の音楽産業が最も輝いていた時代の空気が、きっと部屋いっぱいに広がることだろう。
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