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「謎の抽象画」を額装してみよう!

談話室に飾っていた「謎の抽象画」

この抽象的な絵はキャンバスプリントされたもので、サイズはW1200×H605と横長の大判である。談話室のソファの上に飾るにはちょうど良い大きさなので、しばらくはピンで壁にとめて飾っていた。アカサカベースに来られる方には、この絵の作者についてよく質問されるのだが、まったくもって作者不明である。

 

 

絵のサイズに合わせてフレームを制作する

この絵は、前回のバスキアの絵と同様キャンバス地にプリントされている。額に入れて飾っても見栄えが良さそうだが、特注の額は高価だ。このサイズになると5万円はくだらないだろう。そこで、原画と同じようにフレームに張った状態で飾ることにした。使った材料は以下のものである。

 

1.フレーム用の木材 横1200mm×2本、縦650mm×2本(以上、外枠用)、支柱602mm×2本 2.L字金具(4個入り) 3.タイトボンド

 

外枠のフレームを組み立てる

材料がそろったので、さっそくフレームの組み立て作業に入った。フレーム用の木材は、斜め45°にカットしておくと組み合わせた際に90°の直角になるので覚えておくと良いだろう。斜めカットが難しい場合は、直角で木を重ね合わせた長さがフレームサイズになるようにカットしてもOK。木の接合部は見えないので作業しやすい方法でカットすれば良い。

 

フレームをタイトボンドなどの木工用ボンドで仮止めしたあとで、フレームの外枠をL字金具で固定していく。この作業のポイントは、必ずビスを2点止めすること。1点だけでは金具がぐらついて安定しないからだ。

 

 

 

金具を四隅すべてに取り付けたあとは、支柱を2本サンドイッチするようにして、フレームの両サイドから長めの釘やビスを使って支柱を固定する。この際に気をつけるべきことは、あまりに太い釘やビスを使うと、木目が裂けて木がパックリと割れてしまうことだ。長い釘やビスになるほど太くなるので、外枠から支柱に到達する適度な長さと太さのものを選ぶようにすると良いだろう。

 

 

フレームが完成したので絵を合わせてみると?

フレームが完成したら、絵を四方から引っ張るようにしてキャンバスに固定していく。絵をフレームに合わせてみると、縦サイズが45mmほど大きいことに気がついた。これは、図面をおこすときにおかしてしまった単純なミスで、実寸605mmのところを650mmと記してしまったために生じた誤差だ。

 

再度作り直すことも考えたが、フレームはすでに組み立て済みのため、キャンバスの白い余白に絵の端(黒い縁)を描き足してしまおうと思い立った。絵に塗料がかからないように丁寧にマスキングをして、黒のスプレーで上下の余白を黒く塗っていく。手もとにあったつや消し黒の油性スプレーを使ったが、水性スプレーのほうが匂いもなく後処理などの使い勝手も含めておすすめだ。

 

 

絵と塗料を同化させるため、絵筆でつなぎ目を塗っていく

スプレーによる塗装のあと、マスキングテープを剥がしてみると、黒くスプレーした箇所と絵のつなぎ目がくっきりした直線で浮き出てしまい、どうも塩梅がよろしくない。そこで、仕上げに油性ペイントを使ってつなぎ目を絵筆で塗りつぶしていくことにした。もともと、アクションペイントのように描かれた絵のため、この方法はうまくいきそうだ。絵に対して縦方向にギザギザに塗りつぶしていけば良いので作業はいたって簡単である。

 

 

余白の塗りつぶしのあとは、絵をフレームに打ち込んでいく

いよいよ最後の工程である。絵を引っ張るようにして釘でフレームに打ち込んでいく作業だ。一方向の釘打ちが終わったら、反対方向に絵を引っ張って釘を打ち込んでいけば良い。素材はキャンバス地のため張力をかけられるので作業はスムースに運んでいく。キャンバス地が足りない箇所は黒のガムテープ(布地のもの)で側面を覆ってみると、きれいに仕上げることができた。これですべての作業が終了した。

 

 

完成した絵を部屋に飾ってみると?

部屋に完成した絵を飾ってみた。ぱっと見は原画のように見えるのがこのフレームの良いところだ。大判のキャンバスプリントの利点が生かされる飾り方であり、額に入れるよりも手軽に作れ予算もかからないのが良い。

 

ひとつだけ問題があるとすれば、この絵の天地が不明な点である。以下に、天地を逆にした写真を並べてみた。果たしてどちらが正解なのだろうか? 青から赤へとグラデーションを描いた色使いが鮮烈な印象を与える絵なのだが、端の青いペイントのみ途中で途切れている。これは、最初に描かれた部分なのか、それとも最後に描かれた部分なのか。

 

 

ペイントの色が混ざり合っている箇所を見る限り、黒く細かな線画のあとで最初に色付けされたのは緑だったように思える。中間色を真中にしてあらかじめ青から赤へのグラデーションを描くつもりだったのか、緑を基調とした抽象画だったものに手を加え、青、黄、赤を徐々に足してこのような配色となったのかを推理してみるのも面白い。今までピンで壁に止めて飾っていたときには考えもしなかった作画の過程までもが考察の対象となった。

 

額装することによって何が変わったのか?

額装することによって何が変わったのかといえば「絵との向き合い方」ということに尽きるだろう。今までは、ただ単にインテリアとしてそこに存在しているだけだったものが、こうして額装することでひとつの絵画へと進化を遂げ、そうなると人間にもそれを鑑賞しようとする姿勢が自然と生まれるのである。

 

 

絵という二次元の平面が、額装されることで三次元の立体物として生まれ変わるプロセスには、単なる装飾的な意味を超えた視覚的変異作用、アングルシフトが生じるのだ。それにしても、作者不明の抽象画をめぐるいくつかの謎・・これが解ける日はいつかやってくるのだろうか?

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