裏シティポップ街道を行く 〜シティポップの隠れ名盤〜 その6
丸山圭子「誰かが私を愛してる LADY-GOOD」
裏シティポップ街道を行くの第6弾は、丸山圭子の1983年のアルバム「誰かが私を愛してる LADY-GOOD」。丸山圭子は、1972年にデビューして以来、なかなかヒット曲に恵まれなかったが、1976年に放った3枚目のシングル「どうぞこのまま」が大ヒットして一躍人気歌手の仲間入りを果たす。ボサノバのリズムで歌われる同曲は、丸山圭子自身による作詞作曲で当時22歳とは思えない大人の雰囲気を持った一曲で、いま聴いても色褪せない輝きを放っている。
このアルバムにはA面5曲目に「どうぞこのまま」が収められているが、これは新たにセルフカバーしたヴァージョン。オリジナルよりも、よりボサノバタッチが濃くなり、ジャズ色の強い大人のアレンジで唄われている。歌詞に出てくる、“曇りガラスをつたう雨のしずくのように”というフレーズからも、想起されるのは雨の日の気怠い昼下がりのワンシーンだ。
1曲の作曲をのぞいて、全曲が丸山による作詞作曲だが、曲構成は変化にとんでいて飽きさせない。気怠いスローテンポの1曲目「葡萄ロマン」は、シティポップ風に洗練されたアレンジで、聴く者を心地の良いまどろみの世界へと誘ったかと思うと、2曲目の「STRAY CAT」では、ジャジーなサックスソロで目を覚まさせて、夜の街を彷徨い歩こうとする女心を唄う。
B面の1曲目「LUN LUN」では、当時流行っていたニューウェーブ風のアレンジに乗って、ノリの良いロックミュージックを聴かせ、韻を踏んだ遊び心のある語句にニヤリとさせられる。2曲目の「酔いにまかせて」は、酒に酔ってちょっと浮かれた気分をミディアムテンポに乗せて軽やかに唄う。そしてディープなスローナンバーの3曲目「過ぎゆく季節に」へと続く流れは、とてもスムーズな繋がりで聴いていて実に心地良い。
まだ大人とはいえない29歳の女性が表現する詞の世界は、悲壮感などなくて軽やかで遊び心にあふれている。本格的なバブルを迎える前の時期だが、早くもその予兆のような空気がアルバム全体に漂っているのだ。最後の曲「ガラスの森」は、もっとも歌謡曲色の強い楽曲で、燃えあがろうとする恋の行き先を“くずれてゆくガラスの森”と表現しているが、そこにあるのはあくまで都会的でソフィスティケートされた心の機微でしかない。まさにライトメロウという表現がぴったり当てはまる一枚といえるだろう。
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