Gibson L-1(1929年)のトップ膨らみをリペア
Gibson L-1(1929年)はノースカロライナからやって来た!
Gibsonが戦前の1929年に作ったこのL-1は、ノースカロライナに住むミュージシャンから譲っていただいたものだ。売り手のマイケルとは40日間、メールのやりとりにして36通という根気のいる作業を経て、やっとの思いで我が家に到着したのが2015年4月初旬のことだった。
頑丈なハードケースのなかに、ぴったりと収まるように収納されていたGibson L-1。その下のケース内部には、ジップロックに封印された“木の実”と、ロバート・ジョンソン作詞/作曲の譜面3枚、そしてUSBメモリーが入っていた。木の実は、RJのお墓と並ぶように生えている木から落ちたものだとすぐにわかった。譜面は墓地で演奏する際に使ったものだろう。では、USBメモリーにはいったい何が入っているのか?
興味津々でメモリーを挿してみると、そこには彼がノースカロライナからミシシッピー州グリーンウッドまで573マイル、時間にして9時間以上をかけてRJの聖地を旅してきたことを示す写真が20枚収められていた。それらの記録については、2015年のブログ記事に詳しく書いたのでここでは割愛する。
御年94歳のL-1唯一のネックとは?
マイケルによれば、彼がニュージャージー郊外の中古楽器店で聞いた話では、このL-1はすべてのパーツがオリジナルのままで、大きな修復(ネックリセット/バック交換 etc…)の痕跡もない個体だそうだ。それが気に入って購入に至ったのだという。
ただ一つだけ難点をあげると、トップのブリッジ下辺りが弦の張力で膨らんでしまっているところだ。このため、ハイポジションの弦高が若干高めになっているのだ。ボトルネックでブルースを演るにはかえって好都合なのだが、それ以外のプレイアビリティを考えると、やはり修復してあげたくなるのが人情というもの。
ネックアイロン用の角パイプを使ってフラットに!
我が工房には、お手製のネックアイロンがある。角パイプ内部にラバーヒーターが収まるしかけで、ネックの反り矯正には効果てきめんのスグレモノだ。今回は、このネックアイロンを使ってトップの膨らみを修正していこうと思う。
アディロンダック・スプルースを使ったトップの裏側には、板の強度を高めると同時に音がより広がるように放物線を描いたブレーシングが存在する。今回のようにトップが膨らんだ状態で何十年も経過しているようなヴィンテージの場合は、常温でいっきに圧力を加えていくとブレーシング(力木)とトップ(スプルース)の間に空いた隙間がもとに戻る反面、接着剤のニカワは固いままなので再接着できず強度を保てない可能性がある。
そこで、ラバーヒーターをオンにすることで、接着面のニカワを溶かしてあげれば再接着しやすくなるはずだ。ラウンドホールから手を伸ばして矯正位置を指で触ると熱が十分に達しているのを確認できた。ここで一旦クランプを緩めてニカワが柔らかいうちに再度クランプを締めていく。今度は本止めなのでネックアイロンとトップとの間に白木を挟んだ。この状態で数十日間放置する予定だ。
現在は7月下旬という蒸し暑さのピーク時でもあるので、常にエアコンをドライに設定しておく必要がある。もともと、当工房は無菌室に近い構造のため、夏場はエアコンを付けっぱなしにしてないとカビが発生してしまうリスクがある。そのため5月〜10月の半年間は常に24度以下に設定して空調を稼働させ続けなくてはならない。住戸としての健康管理はもちろんのこと、楽器やレコードなどのコレクションルームも兼ねているので空調管理は必須なのだ。
トップの脹らみ修復の結果はまた後日、このブログで更新する予定なので、興味のある方は数十日後の修理報告を楽しみにしていただければと思う。乞うご期待❣
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