アカサカベースが選ぶ、秘蔵の名盤 第5話
アル・スチュアート「イヤー・オブ・ザ・キャット」
このアルバムは、1976年に発売されたイギリス出身のフォークロックシンガー、アル・スチュアートのスマッシュヒット作品。1967年にデビューとキャリアの長いシンガーで、初期はボブ・ディランの影響を受けた私的な恋愛体験歌をアコギで歌っていたアルだったが、1975年に発売した「モダンタイムス」のアメリカでのヒットを受けて米国に移住し、その勢いのままに発表したのが、この「イヤー・オブ・ザ・キャット」だ。
秘められていた才能が、敏腕プロデューサーによって開花!
このアルバムは、前作の「モダンタイムス」同様、アラン・パーソンズがプロデュースを担当している。前編メロディアスな曲が続くなか、ときにジョン・レノンばりのリバプール訛り(アルは1945年生まれのスコットランド出身だが、ジョンの発音に似た歌い方をする)を聴かせてくれる。ちなみにこのアルバムもアビーロードスタジオで録音されている。
ビートルズやウイングスのレコーディングエンジニアだったアラン・パーソンズが手掛けていることや、イギリスからアメリカ進出という大きな夢があったことも、その歌い方に少なからず影響を与えているのは間違いないだろう。
アルバムカバーはヒプノシスが担当
ヒプノシスといえば、1970年代に大活躍したデザインアートグループで、ピンクフロイド、レッドツェッペリン、ジェネシス、10CCなどのアルバムカバーを担当した大御所。彼等の起用は、前作「モダンタイムス」に続いてのもので、これもアラン・パーソンズのコネクションで実現したのは間違いないだろう。アメリカ進出を意識したのか、アメコミタッチのカラフルなイラストが採用されている。
ポップなメロディと重厚なアレンジが見事に調和
1曲目の「ロード・グレンヴィル」は、ジョン・レノンばりのすこし嗄れた声に、重厚なストリングスやセンスの良いティム・レンウィックのギターソロが重なっていくさまは、もしビートルズが再結成して新曲を出したなら、きっとこんなサウンドになったのではないかとさえ思わせる名演。
2曲目では一転してスパニッシュなアレンジが印象的な「スペインの国境で」。この奥行きのあるサウンドとエッセンスの広さは、アランの手によるところが大きいだろう。フラメンコ調のギターがとても良い味を出している。
4曲目の「別れる運命」はアルらしいフォークソングだが、かつての暗さはなく、別れをテーマとした曲なのにとても明るい“前を向いて歩こう”的な曲。
5曲目は、イーグルスの「テイク・イット・イージー」を思わせるイントロから、まるで10CCのように凝った転調が印象的な「気の向くままに」。ジョン・レノンばりのヴォーカルがいかんなく発揮されたポップチューンで、A面のハイライトともいえる名曲。
B面は、イングリッシュフォーク調の「空飛ぶ魔法」ではじまり、シングルカットされた「イヤー・オブ・ザ・キャット」で締めくくる組曲的な展開。A面が個別曲が並ぶ構成だったのとは対照的なエディットとなっている。どの曲も、聴きやすく凝りに凝ったアレンジは一貫しており、B面2曲目の「ブロードウェイ・ホテル」では、アルのヴォーカルにフルートやバイオリンが溶け合っていくところなど、見事としか言いようがない調和をみせる。
まだ、聴いたことのない人がいたら、ぜひ聴いてみてほしい。とくにアラン・パーソンズ・プロジェクト、10CC、ウイングス、ジョン・レノンあたりが好きな人ならきっと気にいるはずだ。
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