裏シティポップ街道を行く 〜シティポップの隠れ名盤〜 その3
ハイ・ファイ・セット「SWEET LOCOMOTION」
「裏シティポップ街道を行く」の第3弾では、ハイ・ファイ・セットが1986年に発売した14枚目となるアルバム「SWEET LOCOMOTION」を紹介する。赤い鳥の解散後、1975年に「卒業写真」でデビューしたハイ・ファイ・セットが一躍注目を集めたのは、1977年にリリースしたモーリス・アルバートの「愛のフィーリング(原題はFeelings)」のカバー曲「フィーリング」が大ヒットしてからだろう。
実力派のボーカルグループであるハイ・ファイ・セットのアルバムの初期には、荒井由実や村井邦彦、松任谷正隆といった一流の作家陣が曲を提供しており、センスの良い楽曲と抜群のハーモニーが組み合わさったハイクォリティな作品が特徴。歌が上手いだけに、どうしてもボーカルやコーラスに重点が置かれるため、演奏や編曲は小さくまとまっているような印象を受けることもあるが、今回紹介する「SWEET LOCOMOTION」では、バックの演奏もボーカルと同様に主張している曲が並んでいて、そんなところが1980年代的なシティポップの風味となって生きているのだ。
1曲目の「Rosy White」は、爽快なラテンのリズムに乗って、バブル期の浮かれた気分が軽やかに歌われる。〜一人浜辺でまどろむなら、古いTIMEの1ページを陽よけにして眠るといいわ〜とか、〜一面のコバルトに、どこまでも続いてる渚のRosy White〜といった詞から浮かんでくるのは、なんの不安もないバラ色の日々なのである。
4曲目の「ひときれの恋」は、このアルバムでは珍しい短調の曲。井上鑑のアレンジがマイナー調の曲をアーバンに味付けしているが、原曲は杉真理による哀愁の漂うメロディーが印象的な曲だ。この曲でも、失恋を歌っていながら、〜つくりかけのプラモデルと アドレス帳の誰かのナンバー ギリシャの写真 笑う私〜というように、いたってドライなのである。
6曲目の「Starship」は、深めにリバーブが利いたゴージャスなイントロについで歌われるメロディーラインなど、まるでZARDが歌いそうなポップチューンだ。リードボーカルの山本潤子も、あえて情感を込めずに軽やかに歌っているのが伝わってくる。
8曲目の「Vitamin L」は、メンバーの大川茂が作詞、山本俊彦が作曲を手掛けた一曲だが、これがすこぶる良い曲で、このアルバム中では一番ハイ・ファイ・セットらしさが発揮された曲となっている。なんとなく、オフコースの楽曲を思わせるテンポとメロディーが心地よい。
9曲目の「Spring & All」も、メンバーの山本俊彦が作曲を手掛けているが、この曲も実に良い。初期の荒井由実の曲だといえば誰もが信じてしまいそうな、なんとなく健気な曲調で、小泉亮による歌詞などは、そのまま若い頃のユーミンが乗り移ったかのようだ。
なんとなく、すこし気分が晴れない時でも、春のような晴れ晴れとした気分にさせてくれる清涼剤のようなアルバムがこれ。それにしても、潤子さんの声には癒やされるなあ。
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