シティポップブームがもたらしたアナログ格差とは⁉ その3
かつての人気レコードが100円で買えるって本当?
前回の価格高騰番付では、レコード価格が高騰しているアーティストを独自に番付してみた。ネットオークションや中古レコード店をほぼ毎日覗いているうちに、和モノに関しては大体の価格傾向が体に染みついてしまった。最初は、特定のレコード店が恣意的に付けた値段かと思いきや、値段の高いものから安いものの平均値がほぼほぼ一致しているのが分かった。
若干、値段が安かったりするのは、その店の得意分野から外れたジャンルであることが多い。つまり、洋楽のロック系に力を入れている店などでは、和モノがすこし安めに売られていたりするのだ。レコードというのはけっこう場所をとる商品で、売れ残っているレコードが増えれば、商品の回転率が下がるし客足も遠のいてしまう。そこで、中古店では在庫を一掃するために極端に価格を下げて販売することがあるのだ。
わたしは、都内の中古レコード店をひと通り回ってみて、100円で売られている格安レコードを置いている店をリストアップして、それらの店を5年にわたって定期的に巡回する日々を続けてきた。途中、コロナ渦によるブランクはあったが、すべての物の値段が上がっている現在でも少しではあるが格安レコードは存在する。そして、そうした店に置かれているレコードには、お約束のように同じ顔ぶれのアーティストが揃うことが多いのである。例えば、常連の顔ぶれは以下のような感じである。
和モノ レコード価格 お買い得番付
ニューミュージック系
アリス
さだまさし
オフコース
ゴダイゴ
チューリップ
井上陽水
吉田拓郎
中島みゆき etc…
これらのレコードは、わたしが実際に100円でGETしたアルバムの一部である。3年くらい前には、ジャケットや盤質の悪いものが多かったが、最近では帯付きで盤質も良いものでも格安で売られているのを見かけるようになった。
これらのレコードを見て、冗談ではない! こんなに素晴らしいアーティストのレコードがそんな値段で!?と思う方もいることだろう。かくいうわたしもその一人だ。とくに、チューリップ、ゴダイゴなどはリアルタイムでレコードも買って持っていたし、井上陽水、吉田拓郎、中島みゆきといった顔ぶれは、日本の音楽シーンの重鎮であり多大な影響をもたらした偉大なアーティストである。
しかし、これが需要と供給がもたらした中古レコードの現実なのだ。わたしは、彼等のファンの方々に声を大にして言いたい。「もし、あなたが彼等の音楽を愛しているのなら、今すぐにでもレコードプレーヤーを揃えて、彼等のレコードを買いに行ってほしい」と。何故なら、こうした偉大な文化的遺産は後世に伝えていくべきだし、このまま誰も買わずに置かれていれば最終的には破棄されてしまうからだ。
ニューミュージック系では、この他にも以下のようなアーティストを格安でよく見かける。
甲斐バンド、谷村新司、松山千春、来生たかお、杉山清貴、稲垣潤一、山本達彦、山下久美子、因幡晃、長谷川きよし…等々。この他にも、運さえ良ければ自分にとっての“お宝”と出会うこともできるだろう。そして、まだ持っていないレコードを見つけたら、躊躇しないで買ってほしい。だって、なんたって100円ですよあなた! 買わない理由なんてあるわけないでしょう?
ロック系
矢沢永吉
キャロル
サザンオールスターズ
ダウン・タウン・ブギウギ・バンド etc…
矢沢永吉にサザンオールスターズと聞いて、嘘だろ?と思う方も多いのではないだろうか。どちらも現役であり、人気の衰えを知らないアーティストだ。それなのに、なぜ矢沢とサザンのレコードが格安になるのかといえば、おそらくファンの多くがレコードからCDへと移行しているからだと考えられる。
レコードが姿を消してCDへと移り変わったのは、1987〜1988年頃のこと。この時代以降は、CDでのみのリリースに変わっていくということは、コレクションがレコードとCDにまたがってしまうことを意味する。サザンと矢沢のようにレコードからCD時代を経て現在にいたるまで継続的にアルバムをリリースしているアーティストのファンにとっては、音楽メディアがいくつにも分かれてしまうのはどうにもややこしい。
それならば、すべてを揃えられるCDに買い替えてしまおう……そう決断してレコードを手放してしまったファンは少なからずいるはずである。矢沢もサザンも、根強いファンの世代は大人が圧倒的に多いわけで財力も持ち合わせているだろうから、こんな決断もしやすいに違いない。
しかし、レコードで音楽を聴く行為は、CDと比べると段違いに心地が良いものだ。何故かといえば、レコードをターンテーブルにのせてレコードに針を落とすという行為と、レコードが回転して針がトレースしていく光景を見ているのがとても心地良いのである。コーヒーを飲みながら、アナログレコードを聴いている至福の時を過ごしてしまうと、きっとCDには戻れなくなるだろう。
話が横道にそれてしまったが、わたしの場合は格安で矢沢のレコードを見つけたときは、たとえダブっていても買うようにしている。友人が遊びに来た時などにプレゼントするためだ。おかげさまでレコード時代の矢沢のアルバムは、いつの間にか格安でコンプリートすることができた。なんと幸せなことだろうか(笑)。
歌謡曲系
松田聖子
中森明菜
キャンディーズ
沢田研二
タイガース
萩原健一
寺尾 聰
西城秀樹 etc…
歌謡曲のレコードの場合、よく見かける歌手のレコードはとにかく売れに売れたものが多い。松田聖子、中森明菜、寺尾 聰、沢田研二といった歌手のものである。松田聖子や中森明菜の場合、サブスクでヒット曲が網羅されていつでも聴くことができるのも売られてしまう原因ではないだろうか。
格安レコードの王者とは誰か?
ここで、格安レコードの王者と言ってもよいダントツの歌手を発表したいと思う。それはいったい誰なのだろうか?(ドラムロールの音)はい、その答えは……ジャーン西城秀樹でした。
彼は2018年に亡くなっているが、ちょうどコロナ渦を境にして急激にレコードが出回ってきたのは、やはり長年のファンが遺品を整理するようにコレクションを処分しているからではないだろうか。ちょっと切ない気分になるが、これもまた現実である。
歌謡曲系では、この他にも以下の歌手のレコードがよく出回っている。
五木ひろし、石原裕次郎、森昌子、桜田淳子、南沙織、天地真理、田原俊彦、近藤真彦、小泉今日子…等々。歌謡曲の場合は、唯一すべてのレコード価格が高騰しているテレサ・テン以外は、まんべんなくあらゆる歌手のレコードが格安でGETできるチャンスがある。
1980年代に日本のポップスのひとつの頂点ともいえるクオリティーを誇った松田聖子のアルバムを格安で揃えられると知ったら、海外からわざわざ買いにくるファンもいるだろう(つい最近、実際に海外から来ているらしきSEIKOファンに中古レコード店で出くわした)。
さあ、あなたも中古レコード店へ出かけて、好きなアーティストのレコードを探してみてはいかがだろうか。もし1枚でも格安でレコードをGETできたら、きっと幸せな気分に浸ることができるはずだ。
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