ウォーホルのマリリン額装プロジェクト その2
完成した額にカラーリング。さて、何色にするべきか!?
額のフレームにドロ足を取り付け、事前に制作しておいたキャンバスをはめてみると、ぴったりと収まった。この絵は、ウォーホルの代表作である色鮮やかなマリリンとモノクロームの絵柄が並んだ作品。ドローイングのように見えるこの2枚の組み合わせが新鮮な印象を与えている。この構図を活かすカラーリングとして最初からイメージしていたのは、鮮やかな赤だった。
メインのフレームは赤にするとして、フレームの内側を縁取る飾り木を何色にするかを決めるために、シミュレーションを行なってみた。赤、青、緑、黄色のステインで試し塗りした結果、一番しっくりきたのは黄色であった。これは、マリリンの髪の色と同色であること、潜在意識にある黄色〜朱色〜赤の夕焼けのイメージが影響したのかもしれない。
塗料は、木目を活かせる水性ステインを使用
木の塗装には油性と水性の塗料が使えるが、後処理がたいへんな油性よりも作業がしやすい水性のほうが断然便利である。なかでも、木目を消さずに染められる水性ステインはきわめて簡単に塗布でき、ムラもできないという利点があるので、わたしもよく使っている。このステインによる色染めが終わった後、ワックスを塗り込んでいくと、しっとりとした質感になり、クリアラッカーを吹けばツヤツヤした光沢をもたらすことができる。
色鮮やかなポップアートに合った、主張するカラーリング
現代美術のなかでも、ポップアートと呼ばれる作品には色鮮やかな絵画が多い。アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンシュタインをはじめ、ロバート・ラウシェンバーグ、ジャクソン・ポロック、ピエト・モンドリアンなどのアーティストたちの色使いは、大胆な原色を使ったものから心象風景を映したかのような混合色まで、色の組み合わせ自体が作品としての印象を決め、しいてはその価値までも左右させるといっても過言ではない。
そんなアート作品を飾るなら、どんな色の額を選んだら良いのか? 美術館のミュージアムショップや画廊で売られているポスター、シルクスクリーンで圧倒的に多いのは白いフレームである。我が家にある、マーク・ロスコやウォーホルの作品も白いフレームに収まっている。しかし、印象派などの古典的な絵画には、豪華な木彫りの額に収められているものが多い。これは一体なぜなのか? かつての絵画は、額のデザインまでも含めたトータルな美術として存在していたからではないだろうか。そこには当然、絵を売る商人やギャラリーが存在し、絵をより引き立たせるための器としてはもちろん、絵画をコレクションするパトロネージュが、古くは王族や貴族などの上流階級の人々が中心であり、部屋の調度品として飾るに相応しいものであることが求められたからに違いない。
フレームの外側にも縁を付けることで重厚な印象に?
ポップアートに分別される作品が、比較的シンプルな額に収められていることが多いのは、ウォーホルやリキテンシュタインらの作品が版画中心であることと関係があるはずである。一方、マーク・ロスコやジャクソン・ポロック、ロバート・ラウシェンバーグといったモダンアートに分別される作品の場合は、ウォールペインティングに近い、壁と同化した絵画として描かれていることが多いため、原画については無額で飾られていることが多いようだ。
今回の額装プロジェクトでは、素材がキャンバス地であるため、キャンバスを自作してその外枠となる額の制作へと進化してきたわけで、その意味では額のデザインへの自由度は高い。文字通り“既定の枠組み”から外れたアイデアが反映できるわけで、ポップアートの額としてはあまり前例のないものを作ることも可能なのだ。この「枠」のイメージで絵を描いたアーティストにフランク・ステラがいる。ステラといえば、飛び出す絵本のように立体的な絵画作品で有名であるが、ミニマリズムの極地のような枠を多層化したかのような幾何学作品も描いている。
ウォーホルのマリリンをステラ風の枠で囲うコントラストワーク!?
ステラのこうしたレイヤー作品を今回制作しているような額で囲うのも面白いが、今回はウォーホルとステラという現代美術の巨匠2人を、絵と額で饗宴させるという新しいアイデアへと進化させる展開も視野に入ってきた。現代美術の代表的なモティーフを使ったコントラストワーク(対比する仕事)とでも呼べる新たな試みだ。2次元の絵(ウォーホル)vs 3次元の額(ステラ)。絵と額が渾然一体となったダブルファンタジー作品の誕生である。
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