裏シティポップ街道を行く 〜シティポップの隠れ名盤〜 その8
石黒ケイ「ユー・リメンバー・ミー」
今回の裏シティポップ街道で紹介するのは、石黒ケイの「ユー・リメンバー・ミー」。1984年に発売された自身9作目となるアルバムだ。前々回では彼女の出世作となった1980年作の「アドリブ」を紹介したが、「アドリブ」発売から3年のうちに4作品ものアルバムを発表しており、当時いかに精力的に活動していたのかがうかがえる。
石黒ケイのアルバムのなかでは、シティポップ路線がはっきりと出始めた1982年「ヨコハマ ラグタイム」、1983年「パープル ロード」の2作品の人気が高く、現在中古市場でも高値となっているが、その後に発売された、この「ユー・リメンバー・ミー」も捨てがたい魅力を放っている。
音楽的には、デビュー時期の歌謡曲色や「アドリブ」から続いていたジャズ色が薄れて、ライトメロウなAOR色がより強まっている印象を受ける。まさに今流行りのシティポップ好きの層にジャストフィットしそうな曲が並んでおり、そのどれもが高いクオリティーの作品であるのが素晴らしい。作詞、作曲、編曲は何人かによって分担されているが、一枚のアルバムとしてもトータルにまとまっており、A面からB面まですんなりと聴けてしまう。
ちなみにこのアルバムは、それまで契約していたビクターから新興のディスコメイトレコードに移籍後の第一弾として発売されているが、この一作のみ残して次作からはフィリップスへと再度移籍をしている。現在では廃盤となっており、今後再評価が進めば入手困難になっていく可能性が高い。見つけたら今のうちに買っておいて損はないだろう。
1曲目の「I Remember You」から、親しみやすいメロディーに洗練された伴奏ではじまるこのアルバムは、テレサ・テンなどの昭和歌謡にも通じる懐かしさのようなものも備えており、それでいて都会的な雰囲気が全体に保たれているのは、プロデュースを担当した井上大輔とシンガー石黒ケイの意思疎通がしっかりとれていた証だろう。
雨が降りそそぐ気怠い昼のひとときに聴くには、これほど似合うアルバムはなかなかないと思う。これを書いている現在も、朝から雨がやまずに降り注いでいるが、そんなときに聴く「レイニーシャドゥ」は絶妙である。アルバムカバーも秀逸で、彼女の作品中では一番気に入っている一枚だ。あなたも、石黒ケイのアンニュイな歌声を聴きながら…ちょっと一息ついてみてはいかがだろうか。
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