クロスビー / ナッシュ「ホイッスリング・ダウン・ザ・ワイヤー」

このアルバムは、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング（以下 CSN&Y）の活動停止中に、デヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュの2人が中心となって結成されたクロスビー / ナッシュの3枚目のアルバムである。

CSN&Yの4人の活動は多岐にわたり、スティルス＝ヤング バンドでの活動や、各自のソロ活動に加えて、ヤングを除いたCSNでの活動、そしてふたたびCSN&Yの再結成など、バンドやソロ活動の枠にとらわれない自由な活動で知られている。

クロスビー / ナッシュによる本アルバムには、この2人以外にもデビッド・リンドリー、クレイグ・ディグリーをはじめ、ダニー・クーチ、ティム・ドラモンド、ラス・カンケルといったメンバーが参加しており、インナースリーブに収められた写真からも分かるように、一つのバンドのような形態だったのだろう。同じメンバーでのライブ活動も同時期に行っている。

シンプルだが、緻密に計算された大人のアレンジが秀逸

さて、このアルバムだが、抑制の利いた渋い曲とクロスビー＆ナッシュの絶妙なハーモニー、バンドメンバーによる緻密に計算された演奏がトータルに続いていく類まれな名盤である。

何度聴いても飽きないばかりか、聴けば聴くほど味が出てくる鯣のようなレコードなのである。

発表されたのは1976年で、折しも同じアメリカの西海岸から、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が発売されて大ヒットしていた時期だ。1970年代のアメリカを代表する傑作アルバムの影に隠れて、当時はまったく注目されなかったアルバムだが、先にも書いたように嫌味のない佳曲が紡ぎ出す練りに練られた構成は、トータルアルバムとして素晴らしい完成度をほこっている。　

秋の夜長に一人で静かに聴くには、最高の一枚だといえるだろう。

まだ未聴の方は、ぜひ一度聴いてみてほしい。