裏シティポップ街道を行く 〜シティポップの隠れ名盤〜 その10
アン・ルイス「HEAVY MOON」
このアルバムは、1983年に発売されたアン・ルイスの10枚目となる作品である。翌年の1984年に夫の桑名正博との離婚と同時期に放った「六本木心中」が大ヒットして、そのライフスタイルが同性からも支持されてカリスマ的人気を誇るようになるが、このアルバムはその過渡期に制作されている。モデル、タレントから自立したロックシンガーへと転向していく息吹が伝わってくる内容だ。
このアルバムの特筆すべきポイントは、プロデュースを竹中尚人ことCharが行っているところ。伴奏はChar(g)、ジョニー吉永(ds)、ルイズルイス加部(b)の3人、つまりピンククラウドが担っており、アンとの息もぴったり合ったタイトなサウンドを聴かせてくれる。カバーデザインも秀逸で、幻想的なMt.Fujiを背景にうつむき加減のロッカー然としたアンが佇むというクールなビジュアル。まるでヒプノシスを彷彿とさせるようなアートワークで、ロックなサウンドを暗示させるに充分である。
曲間でフューチャーされるCharのギターも冴えわたっており、ドライブの効いたディストーションの音色はハード過ぎずにツボを抑えたものでとても心地良い。インナースリーブには、アンと共にベールを纏ったCharが写っており、2人のコラボレーションアルバム的位置付けだったことが分かる。アルバムタイトルのヘビームーンは、重い月=“思いつき”からきているそうで、いかにも洒落っ気の多いアンさんらしいエピソードだ。
アン・ルイスには、1979年発売の山下達郎プロデュースの「PINK PUSSY CAT」もあって、こちらのほうがシティポップ風である。山下達郎(g,key,perc,cho)、吉田美奈子(cho)、椎名和夫(g)、松木恒秀(g)、細野晴臣(b)、坂本龍一(key)、高橋幸宏(ds)、桑名正博(g)などのミュージシャンンが参加した豪華アルバムなのだが、彼女の本領が発揮されたのは、むしろ今回紹介した「HEAVY MOON」のほうではないだろうか。
音楽的には、純粋なロックサウンドではあるが、裏シティポップ街道を歩けば、こんな掘り出し物にも当たる……そんな一例として取り上げることにした。
関連記事
Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨
アカサカベースでは、トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないユニークなアイデアを活かしたサウンドグッズをはじめ、大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。
屋号 | Akasaka Base |
---|---|
住所 |
〒107-0052 東京都港区赤坂7-5-46 |
電話番号 | 03-3584-0813 |
営業時間 |
13:00〜18:00 定休日:土日祭日 |
代表者名 | 前嶋とおる |
info@akasakabase.com |