時空を超えて

謎の音盤UFOの正体は、結局のところまだ分かっていない。

わたしは、あの日体験した出来事を、今でもたまに思い出す。

夢だったと思えば、それが一番ラクなのかもしれない。

しかし、同様の体験をした人物が同時代・同時間的に存在したことを

後で知ったわたしには、それらが共同幻想として片付けられてしまうのは

どうにも釈然としない。

謎の音盤との遭遇は一度きりだ。

どんなに願っても、どんなに念じても再び現れることはなかった。

精神医療に頼るつもりも、ロールシャッハテストを受けるつもりもない。

なぜなら、わたしの精神的・肉体的健全性はずっと保たれているからだ。

こういうのを、達観主義というのかもしれない。

しかし、それは誰かに奬められたわけでもなく、自然に湧いてきた感情なのだ。

ひとつだけ変わったことをあげると、以前ほどレコードを欲しいとは思わなくなったことだ。

レコード屋に行って、我先にと“エサ箱”を漁ることもなくなった。

あくまで、自分のペースでレコードを買っている。

インターネットも使うし、あいかわらずレコード屋にも通う。

しかし、“即買い”しなかったレコードが、次に行った時に無かったとしても

もう嘆くことはなくなった。

他の誰かが買ってくれたのだから、それで良いのだ。

時代は移り変わり、21世紀ももう少しで四半世紀を迎えようとしている。

わたしのレコードコレクター人生も、早いもので半世紀が過ぎた。

これからも、レコードとの付き合いは続いていくだろう。

たとえ荒波が来ようとも、たとえ嵐が来ようとも……

生きているかぎりは、そうありたいと思っている。

ー　完　ー