オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 10 2021.06.08 NOVEL 自由を求めて、一瞬のスキを突く その頃、少年Sは密かに鑑別所からの脱走を企んでいた。1968年の9月4日、鑑別所では収監者をぶどう狩りへと連れて行き、収穫の手伝いをさせる予定だった。「大野ブドウ園」という施設である。Sは、数日前からこの日の移送中に少しでもスキがあれば脱走しようと考えていた。 Sは、... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 9 2021.06.06 NOVEL もう一つあった現金輸送コース ノエルは、今日気がついた留意点を頭の中で整理しながら、ブルーバードを運転して小金井の本町団地へと向かった。そして、団地内に停めてあるホンダのカブに乗り換えると、国立の駅前にある喫茶店に入った。いつもなら、報告のためにすぐセンパイOの家へと向かうところだが、この日に関しては11時頃に来るよ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 8 2021.06.06 NOVEL 盆の月に羽ばたいた青い鳥 8月の現金輸送車の追尾は23日に行うことになった。何故なら、25日が日曜日で東芝の給料日が前倒しになるのを事前に調べて知っていたからだ。給料日の確認は簡単である。東芝の社員を装って経理部に電話をすれば簡単に教えてもらえたし、給料日に合わせてチラシを刷る印刷会社や生協、商店街ならどこでも知って... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 7 2021.06.04 NOVEL 練馬から送られてきた、まさかの手紙 少年Sは、警察にマークされるほどの札付きのワルだった。昨年だけでも2月、3月、6月に補導されており、保護観察処分の身であったが、実際にはその処分がおりてはいても有名無実化されて自由奔放に振る舞っていた。父親が白バイ警官だったこともあるだろう。1968年5月には、強盗容疑で昭島署に逮... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 6 2021.06.04 NOVEL 犯行のリハーサル中に浮かんだある秘策 多摩農協への5回目の脅迫が行われた1968年7月25日、ノエルと少年Sは前回と同様に9時10分頃に日本信託銀行を出た現金輸送車をクルマで追尾した。銀行を出た黒いセドリックのトランクに、行員たちが向かいの三菱銀行からジュラルミンケースを運び入れて出発するのは前回と同じ流れだ。セドリ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 5 2021.06.02 NOVEL 脅迫文とテレタイプの奇妙な符合 1968年6月に起こった横須賀線爆破事件は、日本の警察だけではなく、アメリカ大使館をはじめ在日米軍にとっても無視できないものだった。なかでも、この犯行を全学連などの過激派によるものと見ていたCIAでは、日米安保条約に反対するデモから在日米軍を巻き込んだテロへと活動が発展することを最も危... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 4 2021.06.01 NOVEL 緊張から解き放たれた色恋のひととき センパイOは、無線機のボリュームを上げた。間もなくして、警察無線の司令室らしき場所からの声が聞こえてきた。 ー「警視庁から府中署、応答願います」 ー「こちら府中署、どうぞ」 ー「白糸台の多摩農協で脅迫事件が発生、現金四〇〇万円を積んだクルマを多... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 3 2021.06.01 NOVEL 3人によるはじめての秘密工作 Oを始めとする3人の入念な準備のうちに、4回目の多摩農協脅迫事件が1968年6月25日に実行されるが、その直前となる6月20日に府中火葬場の裏の空地にあったバス会社の小屋が放火されて全焼する事件が起こった。その翌日の6月21日には、多磨霊園のなかでツツジが焼かれる不審火も確認されている。... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 2 2021.05.31 NOVEL 突然起こった列車爆発事件 ノエルと少年S、センパイOがクルマから多摩農協を視察したのと同じ1968年6月16日、世間を騒がせる事件が起きていた。横須賀線電車爆破事件である。横須賀線の上り列車、横須賀発東京行きが大船駅手前に差しかかったとき、前から6両目の網棚に置かれていた荷物が突然爆発したのだ。この爆発で32歳の男性... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第四章 – 1 2021.05.30 NOVEL 第四章 スカイライン2000GTに残された賭博師の影 ある日、センパイOに呼ばれたノエルとSは、Oを迎えに府中の東京競馬場近くの喫茶店「チェリー」へとクルマで出かけた。ノエルとSは、小金井市本町の団地駐車場に駐めてあるスカイライン2000GTをピックアップしてその店へと向かった。 喫茶店の前で... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第三章 – 17 2021.05.29 NOVEL ひとときの青春時代を過ごす ゴーゴー喫茶で飲み明かした6人(グループの4人に少女2人を加えたメンバー)は、まだ薄暗い早朝に店を出た。全員が酔っていたが、とくに少女の2人はまともに歩ける状態ではなかった。KとHとは店の前で分かれたが、ノエルとSは前を通ったタクシーを拾うと、少女の家まで送ることにした。 ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第三章 – 16 2021.05.28 NOVEL 小さなヤマのあとの美酒に酔う 次の日曜日、ノエルと少年S、グループのKとHの4人は、立川のジャズ喫茶の前で落ち合うと、夕方の時間にスーパーIYへと向かった。発煙筒はHが持ってきたものと合わせて2本ある。前日の土曜、Kと2人で電車の運転台から盗んだものらしい。発煙筒に火を付けて店員を脅す役はH、レジの売り上げ金を奪うの... 詳しくはこちら