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アカサカベースの廃盤アワー 第17話

ジャッキー吉川とブルーコメッツ「ヤングビート ブルーコメッツ

このアルバムが発売された1969年は、グループ・サウンズ(以下GS)ブームに陰りが見え始めた頃。ブルーコメッツもGSからの脱却をはかるべく、ムード歌謡路線のシングルを発売するなど揺れていた時期だ。この「ヤングビート ブルーコメッツ」は、そうしたメンバーたちのうっぷんを晴らすかのごとく全曲が英語のカバー曲で構成されている。

 

 

Side A

A1.キャント・ターン・ユー・ルース

A2.恋はフェニックス

A3.バック・イン・ザ・U.S.S.R.

A4.最後の恋

A5.絶望の人生

A6.アンチェインド・メロディ

Side B

B1.スカボロー・フェア

B2.ラヴ・レター

B3.トライ・ア・リトル・テンダーネス

B4.夢のカリフォルニア

B5.シー・クライド

B6.ヘイ・ジュード

 

この曲構成を見て、えっ!これがブルーコメッツ?と思った方もいらっしゃるだろう。かくいう私もその一人だ。そして、1曲目を聴いてさらに驚いた。そう、あのオーティス・レディングの I Can’t Turn You Loose  をカバーしているのである。ブルーコメッツのように正統的なGSグループ、それも歌謡曲色の濃いグループがコテコテのソウルナンバーをカバーするなんて、誰が予想するだろうか?

 

こうなると他の収録曲を見ても、俄然と興味が湧いてくるもので、アルバムカバーの印象もグッと変わって名盤の誉れ高いレコードに見えてくるのだから不思議なものである(笑)。ブルーコメッツによる演奏と歌・コーラスは、GSグループとしては段違いにレベルが高かったと言われるが、このアルバムに収録されている洋楽のカバー曲には、そんな彼等の計り知れない実力の一端が随所に垣間見れて興味深い。

 

ソウルフルな1曲目「キャント・ターン・ユー・ルース」の次には、一転して美しいバラードの2曲目「恋はフェニックス」を自慢のコーラスでじっくり聴かせ、3曲目では「バック・イン・ザ・U.S.S.R.」を内田裕也ばりのストレートなロックン・ロールで巻いてみせる。アップテンポの後にはスローバラードという鉄板の構成がとにかく聴きやすく、曲調もR&Bあり、ロックン・ロールあり、ロカビリーありと変化に富んでいて飽きさせない。

 

そして、5曲目では、バターフィールド・ブルースバンドの名演で知られる「絶望の人生」をインストゥルメンタルにアレンジ。レイドバックしたギターの後には、オランダのプログレッシブ・ロックバンド、フォーカスばりに熱いフルートソロが飛び交うといった激シブな展開で唸らされる。

 

B面に移ると、サイモンとガーファンクルの「スカボロー・フェア」をコーラスアンサンブル中心で聴かせた後は、スタンダードナンバーの「ラヴ・レター」をフォークロック調に歌い上げる。そして、ふたたびオーティス・レディングのソウルナンバー「トライ・ア・リトル・テンダーネス」を持ってきて、後半に行くにつれて盛り上がるアレンジでグイグイ引っぱっていく。

 

アルバムの最後を飾るのは、前年に大ヒットしたビートルズの「ヘイ・ジュード」。ヘタウマ感漂うヴォーカル、日本人的発音の決して上手いとは言えない英語の合唱で締めくくられるが、この曲については、1969年時点のGSグループとしての未熟さが露呈されたというより、まだ自分たちの歌になる前に曲数合わせのために収録されてしまったというのが真相ではないだろうか。

 

ちなみにこのアルバム、6曲のライブ音源を加えたものが2013年にCD化されているが、現在では廃盤となっていて入手困難な状態が続いている。GSグループとしては後期にあたる時期にリリースされた洋楽カバーアルバムというめずらしさに加えて、ジャンルを越えた選曲、成熟と未熟が混在した演奏と歌など……そんなカルト的魅力満載のこのアルバムには、気をつけないと中毒になってしまいそうな不思議な魅力が詰まっている。

 

残念ながら、今回の「ヤングミーツ ブルーコメッツ」のYouTube動画は見つからなかったので、同じ時代のブルーコメッツの動画リンクを貼っておくので、興味のある方は聴いてみてほしい。1960年代後半へタイムスリップしてみよう‼

 

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