Akasaka Base|オリジナルのオーディオ製品とアメリカ雑貨 アカサカベースでは、オリジナルの高品質なサウンドグッズ(スピーカー、アンプ等)、 トーマ・キャンベルがデザインした世界に例のないアイデアを活かしたメディアアートをはじめ、 大人の秘密基地にふさわしいアメリカ雑貨やコレクターズグッズなどをセレクトして販売しています。

BLOG

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 12

浮かび上がってきた、もう一人の男 翌々日、キヨは武蔵野大地から清流が流れる「真姿の池」のほとりでY氏から聞いた話を、細かく英文で便箋に記すと、それを封筒に入れて国分寺駅で待ち合わせていた諜報員に手渡した。その諜報員はこうした秘密文書やフィルムを専門にあつかう運び屋で、暗号化されていない文書は必ず彼らを通して届けるのが...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 11

閉ざされていたパンドラの箱を開いた清冽な水 「珈琲ボレロ」を出たY氏とキヨは、自分たちの住むエリアとは反対側の南へ向かって歩きはじめた。北口にある恋ヶ窪の森林で起こった一件もまだ記憶に新しかったし、もう少し話したいという欲求をお互いに満たすには、一緒に歩ける距離がすこしでも長いほうが良かったからだ。   ...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 10

珈琲の甘く苦い芳香とヴァイオリンの音色 Y氏とキヨが偶然会った喫茶店(実際には、キヨが偶然を装って入ったのだが)は、国分寺駅南口にある三菱財閥、岩崎家の別荘近くにあった。入口の看板には「珈琲ボレロ」とある。二人は、この喫茶店で午後2時に待ち合わせた。     キヨは、美術学生風のボーイッ...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 9

スパイとして初めて味わった複雑な思い 恋ヶ窪の森林で起こったことは、Y氏にとってもキヨにとっても、その後の生活に少なくない影響を与えていた。いま、自分たちが生きている世界は、GHQの占領下にあるという紛れもない事実。とくにY氏にとってあの日の出来事は、“目に見えない巨大な組織が闇に潜んでいる”という不気味さを感じさせ...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 8

懐の深さと器量の大きさを互いに感じあう キヨとY氏は、急いで恋ヶ窪の森林地帯から走って遠ざかったが、熊野神社近くの通りに出たところで待機していた米兵2名に呼び止められた。米兵たちは、厳しい目で二人を睨んだうえで英語でこう言った。     「君たちは、ここで何をしていたんだ?」 キヨは、...

今年はカップヌードルが誕生して50周年❗

初めて食べたのは、東京下町の野球場「東京スタジアム」だった 日本で初めてカップヌードルが発売されたのは、1971年9月18日のこと。それまでは、インスタントラーメン(袋麺)が主流だったが、現在ではカップヌードルによって市場が開かれたカップ麺が家庭用ラーメンの主役となっている。2011年時点で世界80カ国で発売され、発...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 7

恋ヶ窪の森林にあったクロスロード Y氏の歯科医院は、太平洋戦争中に建った日立製作所の中央研究所近くにあった。国分寺駅の北口から研究所の脇をまっすぐ歩き、熊野神社へと続く通りにあった民家を改装して戦争間際の昭和15年に開業したのだった。     間もなく戦争の空襲で東京都心は焼け野原になり...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 6

二人を引き合わせたライツ・ウェッツラーの銘品 Y氏が歯科技工士の作業場で1時間ほど話し合っている間、キヨはその作業場の住所と表札を手帳にメモし、GHQから支給されたレンジファインダー式のライカで建物の外観を撮影していた。キヨの家には父親の国産カメラがあって、学生時代にそれを借りて自身が属していた新聞部の写真を撮ってい...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 5

空から落ちてきた黒海の真珠 オデッサ Y氏の医院が休みの日の週末、キヨは学生風のカジュアルな服装にメガネ姿で歯科医院を見張っていた。Y氏の自宅は診察室の2階にあり、玄関前の庭には常緑樹が生い茂っていたので張り込みをするキヨにとっては都合が良かった。朝の9時から張り込んでいるが、まだ動きはない。   斜向...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 4

美人スパイと歯科医の出会い 当時、24歳だったキヨの容姿は美しく、東京女子大学の英語専攻学部を卒業して英語教師となったが、戦後の混乱で教師の仕事から離れた彼女は、その美貌と語学力を買われ銀座の高級クラブでGHQの高官(裏の顔は中央情報部のスパイ)にスカウトされ、主に財界の大物との接待の際に通訳として雇われた。 &n...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 3

水面下で起こっていた火の玉争奪戦 Y氏が隕石を持って歯科技工士の元を訪れた同じころ、恋ヶ窪の森林地帯に落ちた火の玉を探して、その在り処を執拗に追っている組織があった。在日米軍である。   1945年12月の同時期に沖縄にも落下した隕石の周辺を立ち入り禁止にして管理下においた米軍は、その隕石がもっている“...

オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 2

戦後に差し込んだ、一筋の光明 Y氏が住んでいた国分寺周辺には、中島飛行機武蔵工場と立川飛行場があり、米軍による空襲の標的はほぼその2カ所と周辺の航空関係の工場に絞られていた。これらの軍事拠点は甚大な被害を受けたが、民家の多くは攻撃の的にならずに大部分がそのまま残ったのだった。   あの日、Y氏が持ち帰っ...

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