オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 9 2021.04.14 NOVEL スパイとして初めて味わった複雑な思い 恋ヶ窪の森林で起こったことは、Y氏にとってもキヨにとっても、その後の生活に少なくない影響を与えていた。いま、自分たちが生きている世界は、GHQの占領下にあるという紛れもない事実。とくにY氏にとってあの日の出来事は、“目に見えない巨大な組織が闇に潜んでいる”という不気味さを感じさせ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 8 2021.04.13 NOVEL 懐の深さと器量の大きさを互いに感じあう キヨとY氏は、急いで恋ヶ窪の森林地帯から走って遠ざかったが、熊野神社近くの通りに出たところで待機していた米兵2名に呼び止められた。米兵たちは、厳しい目で二人を睨んだうえで英語でこう言った。 「君たちは、ここで何をしていたんだ?」 キヨは、... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 7 2021.04.12 NOVEL 恋ヶ窪の森林にあったクロスロード Y氏の歯科医院は、太平洋戦争中に建った日立製作所の中央研究所近くにあった。国分寺駅の北口から研究所の脇をまっすぐ歩き、熊野神社へと続く通りにあった民家を改装して戦争間際の昭和15年に開業したのだった。 間もなく戦争の空襲で東京都心は焼け野原になり... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 6 2021.04.11 NOVEL 二人を引き合わせたライツ・ウェッツラーの銘品 Y氏が歯科技工士の作業場で1時間ほど話し合っている間、キヨはその作業場の住所と表札を手帳にメモし、GHQから支給されたレンジファインダー式のライカで建物の外観を撮影していた。キヨの家には父親の国産カメラがあって、学生時代にそれを借りて自身が属していた新聞部の写真を撮ってい... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 5 2021.04.10 NOVEL 空から落ちてきた黒海の真珠 オデッサ Y氏の医院が休みの日の週末、キヨは学生風のカジュアルな服装にメガネ姿で歯科医院を見張っていた。Y氏の自宅は診察室の2階にあり、玄関前の庭には常緑樹が生い茂っていたので張り込みをするキヨにとっては都合が良かった。朝の9時から張り込んでいるが、まだ動きはない。 斜向... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 4 2021.04.09 NOVEL 美人スパイと歯科医の出会い 当時、24歳だったキヨの容姿は美しく、東京女子大学の英語専攻学部を卒業して英語教師となったが、戦後の混乱で教師の仕事から離れた彼女は、その美貌と語学力を買われ銀座の高級クラブでGHQの高官(裏の顔は中央情報部のスパイ)にスカウトされ、主に財界の大物との接待の際に通訳として雇われた。 &n... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 3 2021.04.08 NOVEL 水面下で起こっていた火の玉争奪戦 Y氏が隕石を持って歯科技工士の元を訪れた同じころ、恋ヶ窪の森林地帯に落ちた火の玉を探して、その在り処を執拗に追っている組織があった。在日米軍である。 1945年12月の同時期に沖縄にも落下した隕石の周辺を立ち入り禁止にして管理下においた米軍は、その隕石がもっている“... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 2 2021.04.08 NOVEL 戦後に差し込んだ、一筋の光明 Y氏が住んでいた国分寺周辺には、中島飛行機武蔵工場と立川飛行場があり、米軍による空襲の標的はほぼその2カ所と周辺の航空関係の工場に絞られていた。これらの軍事拠点は甚大な被害を受けたが、民家の多くは攻撃の的にならずに大部分がそのまま残ったのだった。 あの日、Y氏が持ち帰っ... 詳しくはこちら
オリジナル小説「秘密の八重歯」第一章 – 1 2021.04.07 NOVEL 第一章 戦後まもない時期、東京に落ちた流れ星 太平洋戦争が終結した年の12月、東京武蔵野市のある場所に異様に光る火の玉が落ちてきたという。それは、焼夷弾が発するような音のない、ギラリと不気味に光るオレンジ色の物体で、その軌道をいち早くキャッチしていたのは、連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) であった。終戦間際に... 詳しくはこちら